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今週のThe Economist: ヨーロッパに捧ぐ詩

原題:Leaders: A song for Europe (May 28th, 2005)
Special Report: A severe crise d’identite (May 28th, 2005)


すっかり不定期更新ブログと化しているここで時事ネタを扱うのは結構難しいのだが、既に出涸らしになっていることを覚悟の上でEUネタを書いてみたい。筆者はエントリーのすみっこやコメント欄で何度かEUに対してネガティブなことを書いているし、ネット以外でもEUダメでしょ、といった与太はよく飛ばしている。で、ほとんどの場合は賛成してもらえない。いや、もらえなかった。

それがフランスでEU憲法批准が否決されるわ、オランダでも大差で否決されて「もうEUはこれで終わりだ」みたいな記事が大量に出てくるわ、時代が変わったなぁとしみじみ思う。先週のThe Economist誌(フランスの投票日の前日くらいに発行)でも、はなからフランスでもオランダでも否決されることを前提に特集が組まれている。この特集がポイントをきれいにまとめているように思えるので、それを踏み台にして少し書いてみたい。

The Economist誌は否決の理由を3つに分けて説明している。まず、アメリカ(や中国)などに対抗するためにはヨーロッパは結集してビックパワーとならなければならない、という主張にそれほど支持が集まらなかったということ。次に、この条約を批准すると東欧、特にポーランド辺りから大量に労働者が流入して、ただでさえ悲惨な失業率が更に上昇する可能性に対する懸念が広がったこと。そして、フランスの、そしてブリュッセルであれこれ指図する「エリート」に対する反発が広がったこと。

エリート主義についてはそれほど興味もないし、書ける事もないのでここでは省略する。左翼政権の常として、様々な改革が秘密裏に行われる傾向が強く、それが否決への流れを作る一因となった、とか、これでサルコジ(Sarkozy)が有利になる、といった内容であったことだけ紹介しておきたい。


外交巧者らしからぬEU幻想

1点目の政治的な点なのだが、正直言って筆者には「アメリカに対抗するためにヨーロッパがひとつにならなければならない」という理屈が良く分からない。なんだか三段跳びくらいの勢いでロジックが飛んでいる気がするのだが。もし軍事的にアメリカに対抗したいのであれば、軍事同盟を結べば事足りるし、それは一般的な外交交渉でも同じことだ。なぜ多大なコストを払ってまで「統合国家」の体裁を整える必要があるのだろうか?大体、現実問題として「統合EU政府」が機能し始めるには10年どころではない時間が必要だ。その頃までにアメリカが没落してしまっていたら?中国が高転びしていたら?折角の統合政府も、そもそもの存在意義が失われてしまう。

それに、これは外交戦略としてはかなり硬直的なやり方だ。複数の国が外交手腕を駆使してあたかもひとつの国であるかのように振舞うことは出来る。しかし、ひとつの国はいくら頑張っても「あたかも複数の国であるかのように」振舞うことなど出来ない。わざわざ外交上の選択肢をつぶす意味が本当にあるのだろうか?「普通の同盟関係とは比べ物にならないくらい強固な結束が約束される」という反論はあるだろうが、その「強固な結束」に対しては「内乱」という反作用があることは歴史が教えてくれている(このあたりに筆者は「ヨーロッパらしからぬ」ものを感じるのだが、その点については別稿で)。

もうひとつの問題点は、筆者が「国連中心外交という希望的幻想」で書いたようなスケールメリットとデメリットのジレンマにEUもはまってしまっているという点だ。これはEconomist誌も指摘していて、EUの加盟国拡大に伴って、EUの勢力自体は強化されても、フランスのEU内の発言力は確実に希薄化する。また、アメリカのイラク侵攻で明らかになったように、大きくなればなるほど意思決定が難しくなる(EUはアメリカのイラク侵攻に対して、最後まで統一したアクションをとることが出来なかった)。

結局、「アメリカに対抗する」という曖昧で近視眼的な戦略が野放図なEUの加盟国拡大を招き、それが各加盟国がEUに参加するメリットを削っていくという構図が見えるような気がするのだが。


統一通貨圏の大前提

で、政治面以上に矛盾が激しいのが経済の話だ。経済的には、ユーロ圏内で統一通貨を用いるというのは、各国が金融政策を放棄することに他ならない。なにしろ金利がひとつしか無いのだ。「フランスで利下げをして、イタリアでは利上げをする」なんて芸当は不可能になってしまっている。

これは結構深刻な問題だ。もしEU域内で景気の良い国と悪い国があった場合、ECB(欧州中銀)がその両方を解決することは出来ない。景気が過熱気味のイタリア(あくまでも仮定)を何とかしようと思ったら利上げするしかないわけだが、そうするとただでさえ不景気のフランス経済は大打撃を受けることになるし、逆にフランスのために利下げを実行したら今度はイタリア経済がバブル化してしまうかもしれない。結果として、ECBは全体のバランスを取るために一部の国の不景気や景気過熱を放置するしかなくなってしまう。

逆に言うと、通貨を統一するためには、参加各国の景気の波がある程度一致していなければならない。上の例で行けば、イタリアとフランスが同時に好景気になったり不景気になったりすれば、ECBはどこかの国を見捨てる必要もなくなる。では、どんな時に違う国の景気の波が一致するのだろうか?色々と理屈はあるのだが、一番重要な条件は生産に必要な要素である資本と労働が国境を越えて自由に移動できることだ(これは最適通貨圏の議論と呼ばれる)。労働力がEU域内を自由に移動できれば、他国の失業者は景気のいい(=失業率の低い)国に集まってくる。その結果、景気のいい国では失業率が上がって、逆に不景気な国では失業率が下がって、景気の波は次第にひとつに収斂していくことになるわけだ(ものすごく大雑把な説明)。

さて、ではこの資本と労働力の移動というのは簡単に達成できるのだろうか?資本の移動のほうは問題ない。通貨が統一されれば為替リスクがなくなるので、海外への投資も国内への投資も差はなくなる。資本市場がかなり自由化されているヨーロッパではまず問題ない。

問題なのは労働力のほうだ。暖かいところでうまいものを食わせていないとすぐに死んでしまいそうなイタリア人がポーランドで働けるだろうか?ハンドバック以外に国際競争力があるのはプライドの高さくらいのフランス人が言葉も宗教も違うトルコで働けるだろうか?ちょっと想像しづらい。というか、無理でしょ?とすら思う。いくら法的な国境の壁が取り払われても、文化的な壁は変わらず厳然とそびえたっているのだ。

そして、文化的な壁などよりも遥かに大きな問題はヨーロッパの破綻した労働市場にある。左翼政権によるヨーロッパの労働政策がいかに間が抜けているかは「今週のThe Economist:フランスの労働問題「35時間の憂鬱」」や「大丈夫か韓国(3) 大貧民爆弾が炸裂する日」で少し触れているので詳述しないが、労働者の権利を過剰に保護した結果、フランスの労働市場はすっかり荒廃してしまった。一度雇うとクビに出来ないので、企業は一時雇用契約やインターンシップを活用しまくり、結局労働者は安定した職を得にくくなっている。なによりも、高止まりした賃金はフランス企業の国際競争力を削ぐ一方で、フランスの失業率を高めている(10.2%、イギリスの倍以上。25歳以下に限ると25%以上が失業している)。

この状況での労働力移動の自由化は、フランスの労働者にとっては致命的だ。上で、労働力の移動を自由化すれば失業率の低い国に他国の失業者がやってくる、と書いた。もう少し正確に書くと、失業率の低い国では労働者の奪い合いが起こって賃金が上昇するため、その高賃金を求めて失業者がやってくるわけだ。しかし、フランスの場合は規制によって本来反比例すべき高失業と高賃金が同時に起こってしまっている。失業者であふれるフランスに更に失業者が殺到する構図が生まれるのだ。これから就職活動の若年層のEUに対する拒否感が強いのはその意味では当然だ。


使えない財政政策

さて、ここまで読まれた読者の方には、「財政政策で景気をコントロールすればいいじゃん」と思われた方もいらっしゃるかもしれない。実は、統一通貨圏では財政政策はかなり強力な効果を持つ。通常、財政政策の問題点は「財政拡大のために国債を発行すると金利が上がってしまい、設備投資が減って財政政策の効果が一部相殺されてしまう」点にあるのだが、EUではこの問題がほとんど存在しない。EU各国は巨大なEU金融市場から資金を調達すればよいので、金利上昇圧力は自国だけではなくEU全国に薄く広く拡散する。そのおかげで財政政策は金利を上昇させることなく十分な効果を発揮できるわけだ。

しかし、EUには野放図な財政拡大を許せない事情がある。まず、EU構成国が借金のし過ぎでデフォルトした場合、EUの他国にも相応の悪影響が出る(金融市場を共有しているのだから)。で、そうならないように救済せねばならないわけだが、今度は各国は「借金しすぎても周りが救済してくれるから大丈夫」とまた放漫財政に走ることになる(いわゆるモラルハザード)。また、もし各国が救済しなければECBが救済せざるを得ず、その結果インフレが進行する(この辺りの理屈は「「お金であること」を保証するもの(後編)」と同じ)。更に、金利上昇圧力が他国に拡散するということは、他国は言われなき金利上昇圧力に耐えねばならないということでもある。

そんなわけで、EU(というかEMU)は参加国に「財政赤字はGDPの3%以内に抑えること(Growth and Stability Pact)」という条件を課している。今の日本の財政赤字は6~7%なので、これはそれなりに厳しい数字だ。実はこの議論には色々有力な反論もあって、どこまで正しいかは結構微妙なのだが、少なくともPactが存在する以上、各国の財政政策に厳しい制限があることには変わりはない。


「統一国家」が経済を救う・・・

こうして見ると、EUが統一通貨を持つことには結構無理がある。少なくとも、EU域内での景気のムラを取り除くことはかなり難しい。で、これを放置すれば当然不景気な国では不満が蓄積して、独立運動への機運が高まったりすることになる。

だが、よく考えると日本だって統一通貨を使用しているわけであり、しかも人口動態調査とかを見ている限り日本の中でだって人々はそれほど流動的に移動しているわけではない。引越しするときもそれほど遠くには動かない、というのは全体的に見られる傾向なのだそうだ(住宅系の研究所の人談)。実際、日本の中にも景気や失業率のムラは結構ある。それでも不満が一定以上は高まらないのは、東京や大阪などから税金を巻き上げて不景気な地方へばら撒く所得移転の仕組みが確立しているからだ。

とすれば、EUでも同じ仕組みを作ることが出来れば、この矛盾だらけの統一通貨圏もちゃんと機能するかもしれない。これが出来るかどうかは、EUがどれだけすばやく統一政府に対するロイヤリティを獲得できるかどうかにかかっている。我々日本人も税金が島根あたりに大量にばら撒かれるのには色々と思うところがあるわけだが、フランス人も自分の税金がトルコに使われるのをその程度の不愉快さで許容しなければならない。で、今回の投票結果を見る限り、それは無理でしょと。「EUがこれで終わったわけではない」という論調は結構多いが、筆者自身は以上の理由からEUはこれで緩やかな解体の道を辿らざるを得ないのではないかと考えている。現状EU経済は比較的安定しているが、この先一部の国が深刻な不景気に襲われたときが解体の始まりになるのではないだろうか。


二兎を追うものは一兎をも得ず

結局、政治的な理由優先で無理のある統一通貨圏構想を推し進め、重ねて政治的な理由で統一通貨の採用には無理がありすぎる国々も加盟させ、その結果更に不安定になった通貨圏構想を維持するために、(政治的・社会的には)本来もっと時間をかけるべき統一政府の立ち上げを急がなければならなくなった、という二律背反が問題の背景にあるのではないか。だから政治と経済の話は分けてやれとあれほど言ったのに(←新橋の居酒屋で)。

書き忘れていたが、表題の「ヨーロッパに捧ぐ詩」とは、ラ・マルセイエーズの節回しで「no-n, non, non♪」と歌い続けるという代物。表紙はその楽譜。そんなにEU嫌いですかEconomist編集部。というか、ここまで書いておいて可決されてしまったらどうするつもりだったんだろう。


本日のまとめ

EU構想は政治的には外交戦略を硬直的にするだけではないか。

統一通貨圏の成立のためにはEU域内を労働者が自由に移動できる環境が必要。しかし、法的な国境の壁が消えても、言語や文化の壁はそう簡単には消えない。

それでも統一通貨圏を維持するなら、統一政府を樹立して景気のいい国から税金を巻き上げて景気の悪い国にばら撒く仕組みが必要になる。ただし、これは政治的には非常にハードルが高い(イタリアの中ですらもめているというのに)。

結局、政治的な目的に経済的な課題を混ぜてしまった結果、深刻な二律背反が起こってしまって両方とも達成が不可能になっているのが現状ではないか。

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Comments

アメリカの州の様な存在だったらまだしも、独立国としての歴史が長いだけに
特に経済面の自由だけ完全に奪われてる状況は、そう遠からず変革が望まれる
でしょうね。EUが長い目で見て存続するのであれば。

そう考えると、10億以上の人口を持つ中国やインドとかの内情はどうなってる
んだろうとか不思議になってきます。

Posted by: 名無之直人 | June 06, 2005 at 12:50 PM

一発逆転の案としては、エスペラント語をEU共通語にすれば良いかと。。。
で、やはり、ドルしかないんですか?
円は駄目?

↓の本が面白かったです。
『ユーロは存続できるか?』ブレンダン ブラウン,Brendan Brown,田村 勝省 (シュプリンガーフェアラーク東京)

Posted by: 平手 緑 | June 06, 2005 at 06:28 PM

馬車馬さんこんにちは。

統合の進展に関しては不透明が出てきましたね。
後退や解体するかはともかくとして、遅れや、方針の軌道修正は
避けられないところでしょう。

EUについては馬車馬さんと違い私は基本的には肯定的な立場ですが、
色々と問題があるので数回に分けて書かせていただきたいと思っています。

まず今回の馬車馬さんの論点の重要な部分ですが、
労働力の移動がないから通貨統合がうまくいかない、とおっしゃっているのですが、一方で、フランスの否決の理由のひとつとしてポーランドなどからの労働者の大量移入に対する恐れを挙げられていますね。
しかし、もし労働力が移動しないというのが事実だとしたら、
これは単なる杞憂であって、数年後にその問題が杞憂だと判明したら
問題ではなくなると考えて良いのでしょうか。

また、イタリア人がポーランドに行きたがらないだろうという例を書いてありますが、こういう例の挙げ方は若干意図的に感じられます。
ポーランドはEU加盟国で最も失業率が高く、所得も低いのですから
イタリア人はポーランドに行かないだろうと言われたら確かにそう思います。
実際、そういう例は非常に稀でしょう。
が、イタリア人がミュンヘンやパリ、ロンドンに移住するのに
それほど抵抗感があるでしょうか。

CEE諸国がEU加盟してから1年が経ちましたが、ある記事によるとこれらの新規加盟諸国からイギリスへの移住は5万人、アイルランドへの移住も1万人を超えたそうです。
ポーランドからオーストリアへの移住が約4千人で、これは前年比で
3倍増だそうですが、まだ新規加盟国の国民は(英国のみは制限してないそうですが)労働許可を自動的に認められず移行措置の期間中だと言う事を考えれば、数年後に完全自由化された場合、この数字は更に増えるでしょう。

国内でも完全な労働力の移動が起こっているわけではないというのもその通りで、イタリアでも国内の南北経済格差は長いこと解消していません。この不満を解消するものが財政による所得移転だという事なのですが、実は現在EUでそれがないわけではないし、不十分だからというのが独立志向につながっている理由ではなくむしろ逆です。
つまり、オランダであれだけ反対が大きくなった理由のひとつには、東欧に所得移転が起こっているという主張があります。
EUに対する拠出金は経済規模に応じて決められますが、
補助金の支出はそうではありませんから当然の事ながら金持ちほど
損するわけです。ただし農業予算の規模が非常に大きいので、
フランスのように農業が盛んな国は比較的損しない予算の組み方になっています。
確かにオランダはこの数年景気の停滞感が強まっていますが、
オランダの失業率は5、6%程度、ポーランド、スロバキアのそれは18%程度あります。(この両国は経済成長率は確かに高めですが、それでもまだこの有り様!)
つまり、失業率が高く所得の低い国ほど、もろ手を上げてEU加盟に賛成、
一方、高所得の国ほど拡大に対して不安が大きいという傾向があります。
労働者の流入を恐れる事と、所得移転が行われることに対する拒否感が
あるわけです。貧しいからEUやめたいとかそういう国はないわけです。
中東欧諸国は早期のユーロ導入を目指してますし。

確かに、イタリアでは経済がマイナス成長に陥っています。
これを解決するために、従来であればリラの下落と財政出動が大きな役割を
果たしていたでしょう。
ところが、現在はそのどちらも使えなくなっています。
一方、EUから財政移転が行われているかというと、やはりイタリアは
新規加盟国に比べればずっと豊かですからそれもない。
そういう意味でイタリアは特にユーロ離脱論が出て不思議でない
土台はあります。
当面ブリュッセルに出来ることといったら中国に圧力をかけることくらい
でしょうか。イタリア経済の低迷は繊維製品を中心とした輸出の低迷が原因の
ようですから。

昨日テレビの討論番組を見たら、ユーロ圏の低成長の元凶としてPactが問題になっていました。不況の時には財政を縮小しなければならなくなるのでますます不況になると。ケインジアン的な政策が全くとれなってしまうわけですね。私は個人的にはPactに関しては3%と固定するのではなく、
欧州理事会の政治的決定として柔軟に変更できるようにした方がよいと考えています。景気後退局面では緩和し、好況時には引き締める。
政治的な決定にすると独仏の都合だけで決められて小国の事情が無視されるという恐れがあるのでしたら、全ての国を一緒にしなくても、経済成長率やインフレ率とからめてそういった数字を規定しておけば、不況の国は財政拡大でき、好況になったら縮小するようにすることもできるでしょう。EUの機構はまだ試行錯誤の段階にあり、まだまだ知恵が必要だという気がします。

豊かな国ほど、拠出金の負担が重い一方で、補助金などの受け取りは少ない。
一方で、安価な労働力の流入や、企業の流出といった問題を抱えています。
つまり、貧しい国ほど得する仕組みになっているという批判があります。
これは実際に的を得ているのです。にも関わらず、EUの旧加盟国の指導者は統合を推進しています。これには米国と対抗する超大国になるという目的も確かにありますが、それだけではありません。

このことと、馬車馬さんが書かれた以外の否決の理由については、長くなりましたのでまた次回に。

Posted by: のびい | June 06, 2005 at 08:43 PM

>のびいさん
オランダの否決の主因は、経済ではなく、労働力の移動による文化的衝突と聞いています。ゴッホ映画監督暗殺事件により、「寛容vsイスラム」が問題となりました。

イタリアでは、階級間の移動は少なく、労働者階級(ブルーカラー)が高等教育を受けるという認識そのものがありません。欧州は一般にそういう意識が強いらしく、ドイツでさえ「早期教育は虐待」ととられることもあるそうです。南欧の多くは教育を軽視する国民性があるようです。よって、教育を受けていないイタリア人(当然、イタリア語しか話せない)がミュンヘンやパリ、ロンドンに移住しても仕事はないでしょう。

Posted by: 平手 緑 | June 06, 2005 at 09:52 PM

労働力流入も統一通貨の弊害もEU憲法採択否決しても変わらないような気がするんだが。結局ユーロが下がった分損しただけという印象があるけど、どんなもんなんでしょ。今更散々既出ですかそうですか。
>のびい氏
労働力移動についてはオレもそう思った!どっちなんだよw!
でも読んでてちょっと思ったのは、考え方としてはフランスのEU憲法否決理由と今後のEUの展望はわけるべきかなと。
それはそれとして、労働力の移動は起こるか?起こらないか?で言ったら「貧しい国→豊かな国の一方通行で起こる」が正解なんじゃないかな。で、結果として労働力の移動に期待される域内の景気調整は(許容される時間差の内には)行われないと。そもそも労働力と資本の移動で景気が調整されるのって賃金水準が近くないと期待できないような。そういう意味でEUの最大の問題は最適通貨圏を見失ってるとこのような気がしますね。
と、最適通貨圏について何も知らないオレが言ってみましたよ。次はその辺のエントリを希望です。

Posted by: inari | June 07, 2005 at 11:35 PM

馬車馬さん、平手さん、inariさん、こんにちは。

平手さんには先回りして指摘されてしまいました。
この点は単に次に書こうと思っていたのですが、
欧州憲法否決の背景にはいくつかの複合的な原因があると思いますが、大きな原因のひとつとして、移民問題があるでしょうね。ハーグやアムステルダムなどの都市で市電に乗りますと、気がついたら周りは外国人ばかり、ということが
よくあります。中心部の近くには外国人がやたら多い地区があり、
道端には紙屑が舞っていたりします。
聞くとオランダ人は郊外に引っ越したとのことでした。

フランスもそうなんですが、これらの人々の存在は本来、欧州統合とは全く何の
関係もありません。なぜなら北アフリカなどのイスラム系移民が主であるからです。(オランダは旧植民地のインドネシア系とかスリナム系とかも多いです)。しかし、イスラム教徒であるゆえに、経済的な問題を超えて宗教摩擦的な現象も起きているようですね。

私はシラクとシュレーダーの大きな政治的失敗として、トルコのEU加盟交渉開始を打ち出してしまったことを挙げたいと思います。トルコは人口ではフランスを上回る大国で、経済水準は低く、移民しようとする傾向もかなり強いです。ドイツやオーストリアには沢山トルコ人が住んでいます。実は私も親友にトルコ人がいたりして人懐こいトルコ人は決して嫌いではないのですが、彼等が嫌われている理由もわかります。多くは教育程度が低い上、決して同化しようとせずにイスラム的な風習を維持しようとするからです。大都市にはトルコ人が多く住む地区があり、そこではトルコ語だけで生活が出来てしまいます。(職といっても高度な言語能力がなければできない仕事ばかりではありません。日本でもゴミ処理や介護など日本人があまりやりたがらないが必要とされている分野に外国人労働力を活用しようという動きがあるのはご存知の通りです。欧州でも例えばイタリア料理や中華料理の店の店員で現地語はさほど上手くない外国人なんていくらでもいます)トルコの加盟を喜ぶ国は残念ながら欧州内に殆ど存在しないのではないでしょうか。一体どうしてトルコを加盟させなければいけないのか?軍事的な拠点としての意味や、EUが反イスラムでないことをアラブ諸国に示すための政治的な意味は考えられますが、経済的には
さほど重要であるとは思えません。

EU憲法を国民投票にかけてしまった不用意なシラクとは違い、シュレーダーは
議会の批准で済ませましたが、最も人口の多くSPDの牙城の州の議会選で大敗して総選挙を1年前倒ししました。このままの流れだと秋には首相になるCDUのメルケルはトルコのEU加盟に反対しています。今度の首脳会議でそうなるか、
あるいはドイツの政権交代でそうなるかはわかりませんが、トルコとの加盟交渉は遠からず棚上げされるでしょう。

私は個人的には2007年に予定されているブルガリア・ルーマニアの加盟も延期すべきだと考えています。これらの国はまだ問題がありすぎます。

皮肉なことに、実は今回のEU憲法で反対派の論拠になっていた事は、大部分がEUに対する批判であって、フランスの自由主義経済批判をのぞけば、憲法の内容そのものにはあまり関係がありませんでした。憲法が発効しなくてもニース条約が続いていくだけで、移民やら共通通貨の問題には何ら関係しません。

EU憲法の最大のねらいは拡大されたEUでの意思決定をスムーズにするための決定方式の変更と政策の継続性を持たせるための欧州理事会の常任議長(欧州大統領)の選任にありました。

しかし、現行のEUは民意を直接汲みあげるような仕組みになっていません。欧州議会は直接選挙で選ばれますが権限は非常に限られています。議院内閣制でもないんで、ブリュッセルの欧州官僚が書いたシナリオと各国政府の合議で政策が決まって行きます。通常の国レベルでは政府の政策にNoと言いたければ選挙で与党が敗北します。ところが、EUの政策についてNoが言いたくても、そういった意見をEU市民が示せる場がないわけで、今回の憲法に対する国民投票というのはそういう格好の場になってしまったのでしょう。

労働力の移動についてのinariさんのまとめは非常に的を得ていると思います。
矢張賃金の低い国から高い国への移動は存在するが経済水準が近い国同士での景気循環を緩和させるための移動は少ない、という事になるのでしょうか。
そういう意味では結論としては馬車馬さんの議論が正しいことになります。
しかし国内であっても労働力の移動がなされていないケースは実際に多くあるというのは馬車馬さんも指摘されている通りです。大阪のホームレスが東京に引っ越してくることもあまりないようです。
アメリカも南部から寒い五大湖周辺への移住だとかは少ないんじゃ
ないかと思いますがどうでしょう。
一方、メキシコからロスへは怒濤のように人間が押し寄せているらしく、
住民の半分がヒスパニック系、市長までヒスパニック系になってしまったとか。
英語が話せない人間がゴロゴロいるようです。

北海道が構造的不況であり、かつ政府の補助金が削減されたとして、それでも独自通貨を導入しようとか、そういう動きにはならないのではないでしょうか。ですから経済理論的に最適であるかということと、実際に独自通貨を持つかどうか、これはまた別であると思ったりもします。つまり結局はそこも政治的な要素がかなり入り込んでくると思います。
ユーロ圏は主権国家の集まりであり、まだ「ヨーロッパ人」という意識は「イタリア人」「オランダ人」という意識ほど大きくないので、これだけ問題になるのではという気がします。既にユーロは発足から6年経ちましたが、インフレ率の極端な
乖離で金融政策が難しくなって離脱、、という動きはまだないように思います。
そもそも他の国では物価上昇率が各地域でそろっているのでしょうかね?
単に国のくくりでした発表されるので誰も気にしないだけではないかという
気もします。
名無しの直人さんが言及されている中国なんかはどうなんでしょうか。
省ごとのインフレ率の統計が存在したら面白いんですが。

Posted by: のびい | June 08, 2005 at 03:07 AM

inariさんへ。
書きわすれましたが、ユーロ相場がある程度下がるのはむしろユーロ圏にとって良いことだと思います。不況なんで。

Posted by: のびい | June 08, 2005 at 03:10 AM

名無之直人さん、リプライが遅れてごめんなさい。

正直、単純に経済単位として見たときに中国が単一通貨圏を形成する合理性は余りないのではないでしょうか。大体、言語違いますし・・・(書き言葉は同じなんでしたっけ?)

結局、(最適な通貨圏を設定することで得られる利益)<(通貨圏を変更するコスト)なのでそのままになってるのかなぁ、と思うことがあります。インドは・・・良く分かりません。どうなってるんですかね、あそこは。

Posted by: 馬車馬 | June 11, 2005 at 08:46 AM

平手さん、コメントありがとうございます。

確かに、みんなが同じ言語を使ってしまえばいいという部分はありますよね。どうせアジアと比べるとヨーロッパの諸言語なんて方言程度の違いしかありませんし・・・。

あと、イタリア人の凄いところはぼーっと聞いているとイタリア語としか思えない「そのまんま」の発音で英語を堂々としゃべるところだと思います(笑)。その自信満々な態度はどこからくるんだと。まぁ、発音体系が同じですから、ネイティブにとってはそれでも聞き取りやすいわけですが。lとr, sとsh eとye、日本人はいくら頑張ってもこの違いは分からないですからね・・・。

ユーロにせよ、円にせよ、国際貿易での存在感を出すためには(これは最適通貨圏の議論とは全く別物ですが)、とりあえず巨額の貿易赤字を出さないとダメじゃないかな、というのが私の感想です。

Posted by: 馬車馬 | June 11, 2005 at 09:08 AM

のびいさん、コメントありがとうございます。

労働力移動の件ですが、私は最適通貨圏の条件が成立する理由として2つの要素を挙げています。ひとつは言語その他の「文化的」要因によって、どうしようもなく労働力の移動が妨げられてしまうという点。そして、それ以上に大きな要素として、ヨーロッパの破綻した労働政策を挙げました。ご指摘の通り、この二つは相反する部分があり、前者が成立する場合は後者が、後者が成立する場合は前者が、それぞれ成立しなくなります。

conEUな私としては、どちらかが成立するということさえ言えれば自説の補強には十分ですので、あまり掘り下げずにスルーしてしまったのですが、おっしゃるとおりその辺りはちゃんと詰めるべき点ですね。もしフランス人の危惧が正しいとしたら、文化的な要素は無視できることになります。ただし、今回の選挙で証明されたとおり、その場合はリベラルな労働政策に対する反発が強まり、それが自由な労働力移動の障害となります。つまり、フランスなどのsocialな労働政策はEUへの参加と根本的に矛盾します。本来はそれを解決してからEU統合に進むべきだったのですが。そして、それが出来ないのならば、統合政府を樹立してブリュッセルで財政政策の一元管理をせよ、となるわけですね(で、それも無理じゃない?と進むわけです)。私としては、「文化的」という、正確な定義がしづらい理由付けよりも、こちらのほうが好みだったりします。

イタリアとポーランドの件ですが、たまたま「暖かくて飯のうまい・・・」と書き始めてしまったので、寒くて飯のまずそうな国はどこだろうと考えて選んだだけだったりします。例えポーランドの景気が良くてもいかないんじゃないの?という論旨です。どちらにせよちょっとおちゃらけ気味な表現で、説得力に薄い点はもうご指摘の通りだと思います・・・。

財政の所得移転ですが、なるほど、そういう理屈で行われているわけですね。しかし、それだと景気対策にまるでなっていないので駄目ですね・・・。金融政策が使用不能なのですから、EUは財政政策をどう活用するか、もっと真剣に考えるべきだと思います。まぁ、財政というのは政治的・感情的要素が色濃く反映されるので、色々難しいとは思いますが。

それから、イタリアが最近かなり腰が引け気味なのはunit labor costの相対的な上昇に伴って実質ベースの為替レートが増価し、イタリアのEU域内での輸出競争力が大幅に低下していることが大きいような気がするのですが、その辺りは次のエントリーで書こうかと思っています。読者置いてけぼり企画になる上、まだ内容を考えていないのでもしかしたら没にするかもしれませんが。

Posted by: 馬車馬 | June 11, 2005 at 11:04 AM

inariさん、コメントありがとうございます。

景気動向にかかわりなく、絶対所得水準が低い国から高い国にしか流れないというのは結構重要な指摘だと思います。マンデルの最適通貨圏の議論では、通貨圏内各国の所得水準が同程度であることが暗黙のうちに仮定されているような気がしますので(うろ覚えなので、あとでテキストで確認しようと思いますが)。どちらにせよ、inariさんのご意見に従うと、景気循環を平準化できないと、統合政府をとっとと樹立しない限りEUの先行きは暗いという結論になってしまうわけですが・・・。うーん、やっぱり私はconEUのようですね(笑)。

Posted by: 馬車馬 | June 11, 2005 at 11:16 AM

馬車馬さんこんにちは。

>統合政府をとっとと樹立しない限りEUの先行きは暗いという結論になってしまうわけですが

私もこの結論には一理あると思います。結局、国が同じだから通貨が同じというのは当たり前の事とみなされているので、例え労働力の移動が失業の差を埋めるほどなくても良いのです。実際、例え国内で所得移転があったとしてもそのことが失業率の差を埋めるように作用しているか疑わしいのは、ドイツの東西格差やイタリアの南北格差を見れば明らかでしょう。それよりもチェコのように初めから通貨が別れていた方が失業は少なくなるという場合もあるわけで。
つまり、EUの場合は経済的に無理があるという以前に、まだ国家としての権限がなく、集合体の域を出ていないという理由により、瓦解の可能性が高まるといった気がします。

私も、実は正直言って、馬車馬さんが挙げていた、中国が高転びするとか、アメリカが極度に衰退して世界的な大国としての地位を失うとか、そんな可能性よりも
EUが瓦解する可能性の方が現実的だと思っています。

新聞に載っていた記事によると、1995年を100として現在の経済規模を測ると、中国は207、中東は147、アフリカ141、世界平均140、中東欧136、米国135、ラテンアメリカ126、EU25カ国はなんと122です。どういうわけか日本は載っていなかったのですが、要するにEUは世界平均を下回る成長しか遂げておらず、年々世界でのシェアは低下しているということです。
一般的に言うと、急成長している国家は求心力があり、瓦解しにくいのです。
全盛期の大英帝国は属している事自体にメリットがあったので、あまり
独立運動は盛んではなかったとか。
この点から言うと中国は恐らく大丈夫。むしろEUの方がやばいという事になります。

この低成長の原因はいくつも考えられますが、矢張規制を撤廃し、自由で大きな市場を作るというのもひとつの方策でしょう。
これによって企業の国境をまたいだ再編などが大分進んでおり、
これはEUの政治とは関係ないメリットです。国ごとに政府が非効率な企業を保護してやっていくような経済よりも望ましいと思うのですが。
外交にしても、、矢張イラク戦争の対応をみれば欧州はまだ全然ダメと思います。やはり分かれていては世界での影響力を回復する事は難しいでしょう。

今日読んだ新聞記事によると、現在EUでは2007年から13年までの予算を組む時期になってきていて、20年来のイギリスへのEU分担金の割引を巡ってもめています。ブレアは割引の廃止要求をはね付けているようですが、その記事によればブレアはこれをうまくカードとして使って高く売ろうとしていると。彼の提唱するアフリカ救済に独仏を巻き込むことや、EUをより自由主義的な色彩の強いものにしていくことなどが予想されると書いてあります。仏の憲法否決によって、仏のEUでの発言権が弱まり、却って有権者の意図したのとは逆の欧州へ向かうのでは
ないかとの観測です。

ところで、イギリスという国はある意味、米国と欧州の間に立って色々と外交的な仕掛けをできる立場にあるため、EUの政治面での統合が深まった場合、むしろEUと距離を置くことによって独自の役割を果たすことができる可能性もありますね。
冷戦時代にスイスやオーストリアが小国でありながら、中立国としてユニークな存在感があったという前例もあります。
ちなみにこの両国は冷戦崩壊後、そういった役割を失いつつあり、
欧州に統合されて行く方向にあるように思われますが。
(スイスではまだ国民の抵抗はあるようですが、先日、シェンゲン協定にゴーサインが出て、この点ではEU加盟国のイギリスより先を行く事になりました)。

いずれにしても秋にドイツの政権交代が行われるのは今のところ確実で、
新政権は現政権よりもEU拡大に対して消極的かつ、反米的な傾向は弱まると
思われます。この事もブレアにとっては追い風となるでしょう。

Posted by: のびい | June 12, 2005 at 05:39 AM

のびいさん、コメントが遅れてごめんなさい。最近じっくり文章を書く余裕が(時間的にも、精神的にも)余りなかったもので・・・で、以下は6月8日に頂いたコメントに対するものです。

おっしゃることにはほぼ全面的に同意です。イギリスとかも夜になると移民しか働いてなかった感じですし、パキスタン人のタクシーの運ちゃんとイギリス人が以下に働かないかで盛り上がったこともあります。トルコの加盟が致命的というのも、なんとなく感じてはいましたが、やはり大きかったのですね。やっぱり政治と経済の統合を同時に進めるという根本的なコンセプトに問題があるような気がしますね・・・

で、その政治統合のプロセスにしても、「EU国民」が民意を示す場が用意されていないという問題があり、それが今回噴出した、ということなのですね。やたらと目に付いた(で、個人的には全然ぴんと来なかった)ブリュッセルのエリート批判もその辺りが根っこにあるということでしょうか。

北海道が貨幣的に独立するかについては、上でも書きましたが、独自通貨を作るコスト(紙幣の入れ替えや為替マーケットの設立、そしてなにより中央銀行を創設しないといけません)がメリットと比べて大きいかどうかで判断すべき性質のものではないかと思います。

各国の物価変動がどの程度違っていて、それが(例えば)財政政策でどう解決できるのか、は考えると色々難しそうです。なんだか下手に思い付きを書くと(経済学的に)ものすごい間違ったことを書いてしまいそうで、ちょっと腰が引けるところでもあります(結局、どう物価が動くかの仮定次第で結論が変わってきますし、それは労働市場をどう考えるかという問題とも直接リンクします。こういうことを考え出すと、自分がろくに理論を理解できてないことを実感しますね)。

中国の省別の統計は・・・あったとしても、誤差が±10%くらいあるような気がします(笑)。

Posted by: 馬車馬 | June 18, 2005 at 11:27 PM

続いて、6月12日の頂いたコメントについて。

「成長している国は瓦解しにくい」というのは全く同感です。ちょっと考えても、完全なゼロサムゲームで協調関係を演出するというのは、理論的にも結構難しいものがあります。ポジティブサムだからこその協調関係ですよね。一般的には。にしても、その数字でいくと日本はもっと低いんでしょうね・・・

『やはり分かれていては世界での影響力を回復する事は難しい』という点には私は少し異論があります。十分に強固な同盟関係はかなりの影響力を持ちうるし、逆に統一されてもその内部で意思決定が複雑・困難になった場合はやはり影響力は削がれるのではないかな、と。統一しようがしまいが、重要なのは意思統一のメカニズムが整備されていることではないかと思うのです。このあたりは近いうちにじっくり書こうと思うのですが、3ヶ月くらい前から棚上げになったままですorz。

フランスの否決がかえってフランス国民の望まない方向へ事態を向かわせてしまう、というのは面白いですね。イギリスが対EU戦略をどこまで練っているのかがどうも良く分からない(Economist辺りを見ていても、たまにFTを読んでも、一歩引いて見ている感じがするのですが)のですが、盟友シュレーダーを失い、後ろからはサルコジがじりじり勢力を拡大しているところでシラクがどう動くのか、野次馬的な興味はありますね。

Posted by: 馬車馬 | June 18, 2005 at 11:45 PM

お忙しいところお返事いただきありがとうございます。

外交の話ですが、組織が大きくなって動きが鈍くなる弊害についてはおっしゃる
通りだと思います。現在のEUのような各国首脳が集まって話しあって決める
といった組織では難しいですね。この辺を若干なりとも改善させるという意図は
EU憲法にも含まれてましたが(外務大臣の設置や多数決制の拡大など)。いずれは直接選挙でEU大統領を選んで外交上の強い権限をもたせるとか、EUとしての諜報機関を作るとかそういう方向性でないとダメでしょうね。ただ、そういう事は、少なくともEUの拡大が完全に終了してから検討される事になるでしょうね。それまでは中途半端な状況が続くと思われます。

首脳会議は、まず憲法については批准期限をとりあえず外して先送り、
対応は各国任せ、という妥当な結論に落ち着きました。
シラクはあくまで批准継続と主張していましたが、このあたりが、
政治センスのなさを感じさせます。

予算では決裂しましたが、私が以前読んだ記事通りの展開になってきました。
フランスの求心力が落ちたために、英国がゴネる事が可能になったと。
それに憲法が否決されたオランダと、北欧諸国が同調。
まあ、ブレアの言っているCAP批判はまさに正論なんですよね。
今どき予算の半分近くを農家への補助金に使っているなんぞ
本気で強い欧州を目指しているとは到底思えません。
シラクは一度決めた事だから、一歩も譲れない、なんて言っていますが
説得力はゼロですね。

今年後半はイギリスが議長国です。EUの制度からしてもめた時に調停案を作るのは議長国の役割なので、一方の当事者が議長ではまとまらないんじゃないかという観測もありますが、個人的には秋にドイツが政権交代確実なので、独仏枢軸を崩壊させて英独主導でCAP改革が行われるのを期待しています。
ブラウン蔵相は予算は成立すると言ってますがイギリスとしても簡単には
妥協できないんで、来年に持ち越しになるかもしれません。

イギリスへの還付金もそのまま、農業への補助金もそのままだったら
EUの将来は暗いです。まあ、現在のような流れになった事から考えると
却ってフランスの否決はEUにとって良かったような気がします。

フランスの農民は8割以上がEU憲法に反対でしたが、
一方、EUに留まる事には8割が賛成だとのことです。
要するに、EUはよいが自由主義的なEUは嫌だ、
補助金を沢山くれる「社会的な」EUを支持する、ということなんですね。

やっぱりEUをフランスに主導させるのではダメですね。
ところで、サルコジってどんな人なんでしょうね。

Posted by: のびい | June 19, 2005 at 04:30 AM

のびいさん、コメントありがとうございます。フランスがEUを主導してはダメ、というのは全く同感です。本当は今週書こうと思っていたのですが、ドイツは曲がりなりにもここ数年で労働市場に改善が見られるのに対し(単位労働コストが低下している)、フランスは全然ダメなままです。

socialとliberalのideologicalな戦い、みたいな位置づけは良く見ましたが、怠け者と働き者の戦いとちゃうんかと突っ込みたくなるくらいで。

その意味ではイギリスが主導権を握ったほうが良いことは間違いないと思うんですが、大陸があのサッチャリズムに耐えられるのかなー、と少し意地悪く思っています。そこを乗り越えられない限り、EUの経済統合はありえないと思うんですが(そうでなければ、徹底的にフランス方式で仏独の税金を東欧に注ぎ込む=政治的に無理)。

サルコジは最近党務に引っ込んでしまって良く分からないのですが、比較的器用な人という印象がありますね。信念一筋で突っ走る人ではなさそうです。サッチャーにはなれないタイプのような気がしますねー。

Posted by: 馬車馬 | June 22, 2005 at 02:45 AM

一昨日、地下鉄の無料の新聞に書いてあった記事が面白かったので、
いいかげんに訳して掲載します。

「EUはいかに我々の金を浪費しているか」

3億2200万ユーロがワインの処分に使われている。
余剰ワインは、アルコールに変えてディーゼル燃料に添加される。
(想像できませんが)

311万ユーロがポルトガルのゴルフ場建設のために。

4億7900万ユーロが、デンマークの企業がチーズを外国(イラク含む)に安く輸出するために使われている。

9億1600万ユーロが、タバコ栽培のために使われている。が、あまりに質が悪いためヨーロッパでは売り物にならない。

その一方で、1億4400万ユーロが喫煙防止キャンペーンのために使われている。

600万ユーロがドイツのヨットハーバー建設のために使われたが、そこを使っているのはわずか2艘だけ。

3億900万ユーロが、ギリシャにおける高速鉄道のプロジェクトのために用意された。プロジェクトは実現しなかった。しかし金はなくなった。

1万5千ユーロをあるフィンランド人は受け取った。彼の馬たちが「サウナ」でくつろげるようにするために。

113万ユーロが農業補助金としてイギリス王室に支払われている。
(微笑むチャールズ皇太子の写真付き)

400万ユーロが、セーシェルの島の2つのホテルの間の4キロの道を造るために
使われた。

6千万ユーロが、スペインの贅沢な空港のために補助された。
この空港にはいくつもの噴水と、高価な石造りの床がある。

まあこんな感じで色々と叩くのは大変良いことだと思います。
しかし、以前に書いたように民意を問う仕組みがEUレベルだときちんと
してないんです。欧州委員長にしても、あるいは憲法で規定されている
欧州理事会の常任議長(欧州大統領)にしても、欧州議会の最大会派のボスがなるとか(議員内閣制)、欧州レベルで直接選挙で選ぶとか、そういう方法ではなくて、欧州理事会で決めるんですね。実質的には今の仕組みだと独仏首脳が話しあって大体決まってしまう。ユーロの安定協定の話でも独仏が赤字出しても適当に誤魔化して、イタリアが赤字だと制裁発動という話になる。いやもう露骨ですね。

ところで、今回ブレアの言っている事は内容的には全く正論のように思います。そもそも、彼自身が言っているように、リベラルな経済か社会的な欧州か、といったようなイデオロギー的な大げさなものではなくて、予算の使い道があまりに時代錯誤だから、もうちょっとマトモなものに変えたら?というそれだけの事なんですね。ただ、そんなまともな事を言っても、欧州理事会の中では「ブレアはワガママ」とかいう意見が大勢です。結局これはイギリスが政治的に欧州で孤立しているからに他なりません。ドイツ人だって農業補助金減らした方が良いとホントは思っていますが、
シュレーダーはフランスの肩をもつような事しか言えないんですね。
これは、小泉さんがブッシュの言うことは全て支持するのと全く同じことです。
現在、フランスは右派でドイツは左派政権なのですけれど、もう右とか
左とか関係なく、ドイツはフランスを常に立てて一緒にやっていく。
これはもう殆ど、日本がアメリカの忠実な同盟国、、というのと
同じくらいのドイツの一貫した方向性なのですね。
コールがシュレーダーに変わってもフランスとの関係は変わりませんでした。
で、ドイツが政権交代して、どうなるのか。
政策から言えば、次の独首相はブレアに賛成の
はずですが、しかしフランスとの関係を損ねてまで英国の提案に
乗れるかどうか、そのへんは実に微妙です。

私の住んでる小国では首相(右派)はむしろブレアに対してどちらかといえば批判的な言動をしていて、逆に野党の社会民主党の党首は農業予算を段階的に減らすべきだとか積極的に主張してますね。
要するにもうこれは左右のイデオロギー的な政策の対立ではないんです。
単なる国や立場ごとのエゴの対立そして複雑な国家間の力学。。。
首相がブレアに批判的なのは、その方が独仏の覚えが良いだろうから。
つまり欧州理事会での大勢におもねっているのです。
恐らくはバローゾの次を密かに狙ってるんでしょう。

まあ、落としどころとしては、農業補助金を減らす道筋を明記する(これでブレアの顔を立てる)代わりに別の方法でフランスに金がまわるような事をしてやるようにすることでしょうかね。失業対策とか(笑)。
ブレアは予算をまとめる気などさらさらなくて、単にカッコよいポーズをとっているだけと評する向きもありますが、多分ブレアは自分が議長の間に予算を成立させたいと思っていると思います。
ただ、問題はフランスが譲歩しないかもしれないですね。
来年に回した方がマシだと考えるかもしれません。

Posted by: のびい | June 25, 2005 at 09:17 AM

それから馬車馬さんに大きな誤解があるようですが、フランス流の社会的な欧州というのは、決して貧しい国には金持ちの国が援助してあげましょう、というモノではありません。ポーランドがフランスと同じ基準で農業補助金を受けとるとEUの財政が破綻するから、ポーランドは当面少ししか受け取れないようにする。これがフランスの主張であり、また、東欧の国は社会保障が少ないかわり、税金も安いから放っておけば企業がどんどん流出してしまう。このため、高福祉の国は競争上、税金を下げ、社会保障を下げざるを得なくなるのではないか?(現実にオーストリアが東欧にあわせて法人税を引き下げ、これにドイツも不十分ながら追随せざるを得なくなりました)こういったことを防ぐためにEU全体で強制的に高福祉、高税率にすべきである、というのが「社会的な欧州」の主張するところです。

Posted by: のびい | June 25, 2005 at 09:27 AM

のびいさん、コメントありがとうございます。

確かに、その規模と比べたイタリアの軽んじられっぷりは目に付きますね。もう片方のヨーロッパのいじめられっ子(あくまでもイメージ)であるベルギーがEUでよろしくやっているのとは対照的な気がします。

ドイツはフランスについて政治的な影響力を回復するというのが十年来の基本戦略なのは分かるんですが、アメリカと違ってフランスには経済的/技術的なアドバンテージはないわけで、ドイツにはフランスを切るという選択肢は当然にありうると思います。フランスの影響力は、「周りの国がフランスを尊重しているから」というトートロジカルな理屈に支えられている側面があるわけですし。

ブレアの演説は正しい方向に向かっていると思いますが、問題はたどり着くべきゴールに比べると本当にわずかな一歩という感じで・・・「そのペースじゃ間に合わないんじゃないの?」という思いがぬぐえません。。。

それから、おっしゃるとおりフランス流の社会主義は誤解してました。結局、社会主義的な政策はそうやって延々と矛盾を修正していかないといけないんですよね(そしてそのうち複雑すぎて手に負えなくなり、最終的に目的意識が失われて全てが既得権益化すると)。そういうやり方に無理がありすぎるというのはそろそろ気がついて欲しいと思うのですが・・・

Posted by: 馬車馬 | June 29, 2005 at 01:03 AM

経済規模ではイギリスがフランスを再逆転したような状況ですけれど、
やっぱり地政学的にフランスはヨーロッパの中心にあるので外せない
存在ではあるのでしょうか。

イタリアはどうもベルルスコーニになってからEU内での立場が
悪化したのかなという気もします。
なんとか財政赤字に対しての制裁は猶予するという事になったようですが。

でもトルコの加盟交渉を予定通り開始とは欧州委員会は何を考えているのでしょうか。あんまり広げすぎると市民の支持はますます得られなくなり、
欧州統合は自滅すると思われますが。。

純粋に経済的な事だけ考えればトルコやルーマニア、ブルガリアよりも
クロアチアの方が抵抗が少ないという気もするのですがこちらはボスニア戦争の
戦犯問題がネックになっているらしいです。

Posted by: のびい | June 30, 2005 at 02:56 AM

EU統合について書き始めるとかなりの量になりそうなので、分けて書きたいと思いますが、今回の憲法の否決やイタリアでの署名運動などは、統合を急ぎすぎた、というより無理を通してどおりを引込めたような「ブリュッセル」のやり方のひずみが顕在化したということだと思います。人類の壮大な実験であると言われる統合であるが、ハプスブルク帝国、ソビエト、ユーゴ等の多民族国家が崩壊したように、やはり効率面から考えても無理があるように思う。
連邦などとんでもなく、国家連合も止めたほうがよく、協力体(共同体でもない)くらいが適当(少なくとも予見できる将来までは)ではないでしょうか。

Posted by: 欧州は一つひとつ | September 17, 2005 at 06:38 PM

ドイツの選挙が終わったところですが、
Unionは予想よりも大きく下回り、FDPを加えても過半数をとれませんでした.
新聞(ネットですが)の見出しではまだ政権の枠組み、誰が首相になるか不明とのこと.

しかし、CDU(+CSU)は第一党になったため、Merkelは政権を取ると言ってますが、この可能性はまずなくなりました.

つまり、これでSchröderは2枚のカードを持ったことになります.
すなわち、大連立と信号連立(つまり今までの連立与党プラスFDP)
一方のCDUは大連立以外には選択肢はありません.

Schröderにとって都合がよいのはむしろ信号連立の
方でしょう.党内左派をおさえるのに右よりの連立パートナーが
いれば彼にとってはちょうどよいというくらいですが、
自分より大きいUnionと連立した場合よりもFDP(黄色)の方が遥かに
やりやすい.
一方、FDPにしてみれば、CDUに義理立てしても得する
ことは何もないのですね.
大連立になってしまえばそもそも数としてFDPの
存在意義は何もなくなってしまいます.

理論的には、緑のFischerがSPDを裏切って右と連立とか、
Unionが、Linksparteiと連立する可能性が残されているわけですが、
これはちょっとあり得ないでしょう.
それに比べたらまだSPDとの連立の方があり得るわけですが、
そこまで考えればSchröderはもう1枚カードを持っている.

ということはなんと結果的には、Schröderはなんとか勝ってしまった、
ということです.
CDUが首相の座を諦めてまで与党にこだわるとは思えないので、
おそらくは信号連立(赤緑黄)でSchröder続投でしょう.
このため、Merkelの場合に予想された欧州政策での大きな
方向転換もなくなりました.

Posted by: のびい | September 19, 2005 at 03:47 AM

FDPは信号連立はないと言ってるようです.
ただ、最終的にどうなるかわかりません.
(売値をつりあげようとしているという観測もあります)
ドレスデンの選挙区が候補者死亡で2週間遅れの投票となっているため、
その結果が出るまでの間に色々駆け引きが続くでしょう.
Schröderは大連立を望むと言っています.
CDU内部でMerkelの責任を問う声が出てくるのを
待っているのでしょう.

まあいずれにしても、10月3日のトルコの加盟交渉開始は
確実になったというところでしょうか.
ユーロは下がっているようです(良いことです).


Posted by: のびい | September 20, 2005 at 01:42 AM

欧州は一つひとつさん、コメントありがとうございます。

最後の一文には全く私も賛成でして、なにもそんな無理をしなくても政治的連帯は達成できるだろうと。大ヨーロッパにロマンを感じるのは分かりますが、現実主義的な欧州政治家らしからぬ判断だったと思いますね。

他人事としては、通貨統合の壮大な実験がどのような帰結を迎えるのか、興味は尽きないわけですけれども(笑)。

Posted by: 馬車馬 | September 22, 2005 at 07:28 PM

のびいさん、コメントありがとうございます。

いやぁ、他人事ながらだいぶ困ったことになっているみたいですね。

純粋な選挙戦略としては、郵政という生活と直接かかわりのないところをテーマに「改革するかどうか」を問うて勝負に出た小泉首相と比べ、税制というど真ん中で勝負を挑んでしまったメルケル(というかキルヒホフ?)に老獪さが足りなかった、ということだと思います。

税制と違って、郵貯は大多数の人は「総論」しか持ちませんから、ストレートに改革を支持できたんでしょうね。

今週のThe Economistが小泉首相の勝利を「the very Japanese revolution」(結局、自民党は与党のままだし、何も変わってないじゃんみたいな文意で)と称していましたが(斜め読みですが)、今回のドイツの騒動をどう総括するのかちょっと楽しみです。

Posted by: 馬車馬 | September 22, 2005 at 07:47 PM

馬車馬さんこんにちは。

Merkelはおっしゃる通り政治家としての老獪さがちょっと足りないと思います。私自身は正直にモノを言うのは必ずしも嫌いではないのですが、消費税上げるとか、所得税をフラットにするとか言われれば反対する人が多いというのは当たり前ですね。富裕層は元々CDU支持なのでしょうから、少なくとも選挙キャンペーンとしてはあまり意味がなかったかと。

今日ポーランドで選挙がありますが、こちらは右派への政権交代が確実なようです。私の聞き間違いでなければ野党は所得税を15%フラットにすると言っているようです。どういった事情でこういう極端な主張が出てくるのかよくわかりません。アングラ経済が拡大して所得の捕捉が難しいという事なのでしょうか。ポーランドは数字上は現在経済は上向きの筈ですが、それでも失業はまだ20%近い状況が続いています。これが政権交代への期待につながっているのでしょうが、必ずしも政権が変わったから大きな変化が望めるかといったらそうではないような気がします。ポーランドなどユーロ移行を目指す国ではこのために財政赤字を増やせないという足かせがありますし。


ドイツのCDUの公約は失業保険の負担を軽くする代わりに消費税を引き上げるというもので、ドイツでの雇用を少しでも流出させないようにという意図でしょうが、輸出が好調でも内需が不足のために景気回復しきれないのですから、消費税上げというのは橋本内閣の時みたいな効果を生んでしまいそうです。

むしろ高速道路や大学など、他国では有料のものを無料に維持しているあたりを変えて財政負担を軽減した方が良いようにも思います。

Posted by: のびい | September 25, 2005 at 08:20 PM

ポーランドの選挙結果は、左派政権(旧共産党系)は大敗し、
右派政権への交代が決まりました。
汚職が与党大敗の理由と報道されています。

上に書いた15%云々ですが、実は右派でも主要政党が2つあり、
そのひとつが主張していたようです。選挙前はそちらの党が支持率で
リードしていたようですが、結果は逆で、批判的な党の方が
トップになったようですので、おそらくフラットな税制にはならない
ものと思われます。
この両政党が連立を組むことを宣言していますが、
どちらもユーロの早期導入を目指しているので、
ポーランドは2009年頃にもユーロを導入するかもしれません。

チェコの方が経済的条件は早く満たしそうですが大統領がEU懐疑派なので遅れる可能性もあります。かつてナチスドイツやオーストリアに支配された歴史が長いせいで、どうにも不安だ、みたいな事を大統領が話してました。
じゃあ、なんでEUに加盟したんですかと突っ込まれて「そうするしかなかったんでやむを得ない選択だった」とか、EU憲法についての対応を問われて「EU憲法は2カ国で否決されたからもう終わりだ」とも話していました。

今日はEU非加盟だが個別の件についてEUと協定を結んでいるスイスで、労働力の移動の自由を新規加盟10カ国へ広げるかどうかの国民投票があり、
賛成が多数となりました。この結果、2011年には他のEU加盟国同様に、スイスとEU25カ国との間で労働力の移動は完全自由化されます。
スイスは既にシェンゲン条約も国民投票で批准を決定しています。
それでもEUには加盟しないところが、独特の伝統を持つスイスらしい
ところですね。国連にすらごく最近まで加盟してなかったくらいですから。

Posted by: のびい | September 26, 2005 at 08:59 AM

「欧州は一つひとつ」さんが書かれている、ブリュッセルが無理難題を、、
という問題ですが、
一部のEU指令を廃止するとかそういった事が少し新聞に出ていました。
強引すぎたり、不要な規制ではないかと思われるようなものがあるのは
事実と思います。

ところで、ドイツの今回の選挙も、結局のところ、旧東ドイツでLinksparteiが
かなり得票していることが、このような膠着状態を生んでいる原因です。

更に州ごとの得票を見ましたが、ザクセンはおそらくメルケルの個人的なつながりが理由(彼女はライプチヒ大学出身)でCDUの得票が多いようですが、他の旧東の州は圧倒的にSPDが強いです。つまり旧西独だけで見れば
右派があっさり勝利しているというところです。

つまるところ、どう考えてもドイツは統一を急ぎすぎたように思います。
韓国もこの事はよく見て考えていると思いますが。


Posted by: のびい | September 29, 2005 at 04:08 AM

のびいさんのコメントを拝見しているとヨーロッパの人間模様といいますか、国模様を垣間見ることが出来て大変面白いです。

キルヒホフの税制改革についてはそれほどちゃんと調べていないのですが、なんといいますか、法律屋さんの税制改革という感じで、経済合理性とかはちゃんと突き詰められてるのかなと言う気がしてしまいます(地下経済の比率が高い場合には止むを得ない側面もあるかもしれませんが・・・)。しかし、一体いつになったらドイツの騒動は収拾が付くんでしょうね。。。Economist誌にはnightmare呼ばわりされてしまってますが。

失業保険料軽減&消費税増税は消費者から企業への所得移転に他ならないわけですが、のびいさんのおっしゃるとおり内需の冷え込みを助長するだけに思えますね。ただし、貿易黒字を更に拡大させる政策でもありますから、ドイツ経済にとって一概に悪い選択肢とは言えないかもしれません(ドイツの物価がどの程度すばやく調整されるかにも依存しますが)。

まぁ、イタリアみたいな国に更に負担を押し付けるある種の近隣窮乏化政策ではありますけど。

Posted by: 馬車馬 | September 30, 2005 at 06:21 PM

のびいさん:

東ドイツの現状は大変興味深いですね。経済的な断裂だけではなく、政治的にも断裂が続いていると。通常は右翼から左翼までの支持の分布を取ると真ん中の中道支持がふくらんだ、正規分布に近い形になるものですが、ドイツでは右と左に2つの山が出来ているのかもしれないですね。

通常は、右と左が妥協しあうと中道な政策が出来、ちょうどそこが支持の多いところなので望ましい結果になるのですが、ドイツの場合中道な妥協案では誰一人納得できない、という構図になってしまっているのかもしれませんね・・・。今回はシュレーダーさえ首相の座をあきらめればとりあえずまとまりそうですが(彼があきらめられるかどうかは知りませんが)、今後この問題は長く尾を引くかもしれませんね。

Posted by: 馬車馬 | September 30, 2005 at 06:31 PM

馬車馬さん

Kirchhofの件ですが、ドイツは法学が一番エラいと聞いたことがありますが、
経済が一番の問題である時に、財務相に法学者を据えようという
あたりに救いようのなさを感じます。
日本なんて首相が経済学部出身ですもんね。
自分自身がどれだけわかっているかはさておき、
人脈が多いという事だけでも適切な政策につながります。

コールにしろ、ゴルバチョフにしろ、経済音痴だったのが失敗に
つながっているわけで。。

シュレーダーは選挙前はそれなりに社民党としてはかなり企業よりの経済改革を進めてきて今でも相当、労働分配率は下がってるようです。
ですが、その成果が目に見えて表れる前に選挙になってしまいましたから、
その意味で労働者層の票が左翼党に流れた面もあると思います。

ところで、メルケルは増税を公約した事もおかしいと思いましたが、
アメリカ寄りの外交にしてロシアと距離を置こうというあたりにも
センスのなさを感じます。

まず基本的に現在のドイツ人は反米的な傾向が強いのでそんな事を
言ってもぜんぜん受けません。メルケルは旧東独出身なので、ロシアが嫌いなのはよくわかるのですが、ロシアはエネルギー供給の面から
ドイツにとって極めて重要な戦略パートナーであり、好き嫌いで
関係を切ることは国益にかなっていません。
別に私がアメリカよりロシアが好きだというわけではなくて冷戦の終結により、
ドイツの置かれている状況が根本的に変わった結果こうなっているということです。

イギリスを見ればわかりますが、欧州諸国がアメリカに加担しすぎると得するどころか国内が不安定化するだけです。これはイスラム諸国にあまりに近く、国内にもたくさんのイスラム教徒を抱えているからです。

日本はまた少し事情が違います。まず、中東の石油への依存していること。
ヨーロッパ諸国と違い近隣に同盟国がないこと。
中国との関係は私は敵対はできるだけさけた方が良いと思っていますが、
信頼できる同盟国という関係には到底なれないでしょう。
また、中長期的には共産党独裁体制は続かないでしょう。
そういう意味でアメリカとの同盟関係は安定した日本のために
重要でしょう。

しかし、アメリカにとっての日本の防衛の重要性は
冷戦時代に比べて明らかに落ちているわけなので、日米安保は双務的なものに変質せざるをえません。

イラクですが、そうそう簡単に、撤退はできないと思います。
米英軍がいなくなって、イラクが安定化するのは到底無理だと
思います。スンニ派と内戦状態になるでしょうし、仮にシーア派が
勝利をおさめたところで、反米的なイランの影響が強い政権に
なってしまう可能性があるのではないでしょうか。
となるとずっと駐留を続けなくてはなりません。
ひょっとするとアメリカは核問題を口実にイランもつぶそうとする可能性も
あります。
英仏独はそうならないように時間稼ぎをしているような感じです。
(ブッシュ大統領の任期が終わるのを待っているのでしょう)
イランの方がたぶん経済制裁でボロボロだったイラクよりも戦争はやっかいです。日本も本気でアメリカの同盟国たろうとするなら、さっさと憲法を改正して派兵にそなえた方が良いでしょう。

しかし、イギリスなどを除くと日本はアメリカの最も忠実な同盟国のひとつだと思いますが、世論調査等の結果をみるかぎり、アメリカ人からはそれほどには思われていないようなんですね。

また、フランス人やイスラム教徒などアメリカを敵視している連中でも意外と
日本に対しては親近感を持ってるんですよ。
要するに白人でも英語国でもキリスト教国でもないので全然別に見られてる
わけです。
このへんが、日本とイギリスの立場が似てはいるが(近隣諸国よりアメリカとの同盟関係を重視)、根本的に違うところなのかもしれません。

かなり先の将来に条件が変わりさえすれば(中国がもっと経済発展し、より親日的な政権になった場合)意外とあっさりとアメリカを捨てるかも、という気もします。

その点、イギリスはいずれはEU脱退の可能性もあり得るかなあという気がしています。イギリスは政権交代で今以上の親EU政権になるという可能性もないですしね。

話はそれましたがドイツは第三者の首相による大連立になりそうな感じですね。
政策的には徐々に話し合いが進んでいるようです。
まあ、ドレスデンの選挙結果でSPDが全面勝利でも無い限り、
メルケルも一方的に譲るという事はないでしょうから。

Posted by: のびい | October 01, 2005 at 08:24 AM

のびいさんのコメントはいつものことながら勉強になります。

ドイツは法学が一番えらいというのはなんとなく納得できるものがありますね。そういえば、ドイツは経済学が強い大学も少ない気がします。ボン大学くらいではないでしょうか。エラい先生を抱えているのは。

のびいさんの話をうかがっているとメルケルはちょっと不器用(慣れてない?)感じですね。外交方針の変更なんてどうせはっきり打ち出せるものでもありませんし、なにも不人気な策をぶちあげなくても。マジメなんでしょうか。
ドレスデンの勝利でどれだけ有利になったかは私には分かりませんけど。

日米同盟が双務的なものにならざるを得ないと言う点には全く同感で、今のブッシュのやり方がある以上日本も色々と覚悟を迫られているのだと思います。どちらにせよ、今がアメリカを裏切るタイミングとしてベストである確率は限りなくゼロに近いので、同盟の果実をどう具体的に享受するか、そのためのコストをどこまで支払うかは難しいところですよね。幸か不幸か、ブッシュがレームダック化しそうな感じもありますから、うまくいけば先送りできるんでしょうが。

今後長期的な日本という国の位置づけはとても面白いテーマですよね。位置的にも、文化的にも、かなり特殊な大国ですから。

Posted by: 馬車馬 | October 03, 2005 at 07:29 PM

馬車馬さん

勉強になるなどと、過分なお言葉恐縮至極です。
メルケルはやっぱり物理学者だからでしょうか。
シュレーダーの泥臭さや受けを狙った姿勢とは好対照です。
ドイツはアメリカにはっきりとたてついてしまったせいで、
常任理事国入りなど難しくなってますから、米国との関係を改善するという
の重要な外交課題ではあると思いますが、でも昔のような関係にはもう
戻りようがないのだと思います。環境が変わってしまったのですから。

ドイツの大学には、経済学の分野にはあまり著名な教授はいないのですね。
ビジネススクールなどでも、英仏にくらべてぱっとした学校がないようですね。大学制度自体が古いとか、エリート校をつくらないとかいった要因もあると思いますが、そういった分野が他の国比べて重視されてないのかもしれないですね。

そういえば、先日、大江健三郎氏がこっちのテレビに出ていました。最近、日本が愛国主義が強まり右傾化している、民主主義の危機である、、といった内容の発言をしてました。どうしてこういう化石のような考え方しかできないのか謎なんですね。実は日本人は何にも変わっていないわけで、戦後一貫してアメリカ依存だったのを今後もそれを続けていこうという事に過ぎないと思うのですが。そのためにも必要なので憲法も改正しましょうというだけの話です。

実は、朝日新聞のような大アジア主義的な考え方の方が本当の意味で大東亜共栄圏を掲げた戦前に近く、実は本質的には右翼的な考え方でしょうね。表面的に中国に謝罪するのは過去の侵略の否定だから左翼的だととらえられがちです。が、実は全然逆なんじゃないかなと。
これはドイツが周囲の国に謝罪をして、領土ももう求めませんとやって、その実、統一されつつあるヨーロッパでドイツ資本がどんどん支配を強めている、
また、ドイツの国際政治での影響力は強まっているというというのをみればわかります。でも、国民の生活はかつての小さめの西ドイツの方が豊かだったわけですね。

私はいつか日本はそういう方向に舵をとるんじゃないかと思ってますが、まだ20年くらいは先でしょう。日本人のアジア蔑視もだいぶんありますし。それまではアジア統合の動きがあっても、積極的にアジアのリーダーとして振る舞って独自の立場を強めるというのではなく、EUにおいてイギリスが果たしているような、アジアでのアメリカの代弁者として機能することになるでしょう。

Posted by: のびい | October 04, 2005 at 09:25 AM

このエントリと真っ向から逆らうニュースが入りました。
この件についてどう思いますか?これを推進しているADBの黒田総裁や、共鳴している元財務官の榊原氏は、一体何を考えてやってるんでしょうか?↓

【ハイデラバード(インド南部)4日共同】
谷垣禎一財務相と中国の金人慶・財政相、韓国の韓悳洙副首相兼財政経済相は4日、 インドのハイデラバードで会談し、東アジア通貨の価値を比較できる共通の為替指標である「地域通貨単位」の創設について、長期的に検討していくことを合意した。 日中韓の財務相会議が、通貨単位の検討で一致したのは初めて。アジア開発銀行(ADB)が提唱する「アジア通貨単位(ACU)」とも重なる構想。アジア経済を主導する3カ国が地域通貨単位の検討を開始することで、将来の通貨統合も視野に 入れた金融協力に一歩踏み出した。

Posted by: popper | May 05, 2006 at 01:27 AM

pepperさん、コメントが遅れてごめんなさい。

まぁ、普通に考えればジョークでしかないと思うんですが、これをまじめに推進しようとする人がいるから困りものです・・・。ヨーロッパですらうまくいかないのに、海を隔て、言葉が根本的に異なり、宗教・文化も千差万別な東南アジアでどうやって労働力の移動を円滑に行うのかと。EUにトルコが入るだけでもあれだけ大騒ぎしてるのに。

所詮政治的な交渉のネタとして便利だということなんでしょうが、EUのようにそれに引きずられて蛮勇を奮うような真似は勘弁してほしいですね。

Posted by: 馬車馬 | May 10, 2006 at 07:58 PM

この話は通貨統合をするとかそういう話ではなくて、
単に人民元をドルとペッグするということから脱却しつつ、
アジア通貨相互間で安定を図るための目安ではないのかなと思います。

Posted by: のびい | May 14, 2006 at 03:39 AM

のびいさん、コメントありがとうございます(毎度リプライが遅れてごめんなさい)。

もし中国がそこまでを現実的なプランとして描いているのであれば、これはもう長足の進歩というべきで、大いに評価できると思います。ただ、もしそうであればコキンチュウ氏の訪米でもそれに類するコメントが「土産」としてあってしかるべきではなかったかとも思います。ただ、私個人としてはアジア域内で通貨の安定を図る意味が余りないように思うのですが(通貨危機のようなfire sellingの防止は必要だと思いますが、それは通貨スワップ協定で十分なような気もしますし)。

Posted by: 馬車馬 | May 21, 2006 at 02:20 AM

馬車馬さん、リプライを見落としておりましてすみません。

私が言いたかったのは、将来的なドルの価値の大幅な下落を見通してそれによる混乱を避けるために、対ドルでの為替相場以外の他の指標を前面に出す意図があったのではないかということです。

また、アジア諸国相互間での通貨の安定を図る意味ですが、当然為替リスクが少ない方が企業にとってやりやすいわけです。

Posted by: のびい | September 23, 2007 at 04:58 PM


のびいさん、コメントありがとうございます。こちらこそリプライがものすごく遅れましたので。

難しいのは、アメリカに対する巨額の貿易黒字を抱える国がそういうことをすれば、それ自体がドル安要因になり、中国が真っ先に損をするということだと思います。もちろん、日本も損をするわけですが。更に、事実上ペッグをされてしまう側の国の金融政策が使用不能になるというのは中国以外のアジア各国には容認できないでしょうから、結局介入で突き崩されて企業にとってもあまり得にはならないような気もします。

ただし、最近のブラックストーンへの出資を含め、中国当局が日本よりもこの件についてモノを考えていることは確かだと思います(ブラックストーンへの出資は失敗だったと思いますけど)。

Posted by: 馬車馬 | September 30, 2007 at 06:36 PM

ユーロは泥舟でした。
学生時代より馬車馬さんにはお世話になっております。
懐かしさに駆られて読み返していれば・・・
卓見です。
当時、EUに通貨統一のデメリットを考慮することができていれば、今現在の苦境を回避する手段くらいは用意できたでしょう。
思い返せば2005年といえば米国ではブッシュ政権のもとで景気が拡大し、海外にも波及していた時期でしょうか。
当時の熱狂が、現在の裏返しになっている気がしますね。

Posted by: ヒウチ | June 20, 2010 at 09:43 PM

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