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問われるべき責任

このブログを始めるにあたって、筆者はいくつかの「ルール」を決めていた。そのうちのひとつに「条件反射で感情的なエントリーを書かない」というものがある。別にそういうエントリーに意味がないと思っているわけではなく、そういうエントリーは文章の切れ味が勝負になってしまうので「だらだら書き流す」筆者のスタイルには向かないと思ったわけだ。

ただ、今回だけは少しその禁を破って(禁というほど大層なものではないのだが)先日のロンドンの事件について書いてみたい(そんなわけで内容は薄い、というか昔書いたエントリーの焼き直しになってしまう)。


兎にも角にも際立つマスコミの差

わざわざそこまでして書こうと思ったのは、この件についての新聞各紙の社説があまりに下らなくて眩暈がしたという1点に尽きる。限られた時間、それ以上に限られた情報で書けることに自ずと限界が出るのはしょうがないが、まるで知性が感じられないというのは社説としてはまずいだろう(←これでも控えめで上品な表現をチョイスしている)。

まさかこのレベルが世界標準でもあるまいと思ってFTのコラムも流し読みして見たが、質の差は歴然だ(すぐにリンク切れ、というか有料化されてしまうのでリンクは張らないが、www.ft.comのComment and Analysisを適当に流すだけで分かると思う)。結局、普段からこの問題について考えを蓄積していないから、中学生の作文レベルの代物を新聞紙面で垂れ流すことになるのだろう。


問われるべき責任の所在

9-11以降、この手のテロリズムの後のマスコミの反応というのはある程度パターン化している。まず最初の1日は思考停止。テロは許されないとか、世界が結束してテロに立ち向かえとか、そういったお題目が犠牲者への追悼とともに語られる。それから情報活動の手落ちとか、テロリストをどう水際で抑えるかとか、市民の人権との兼ね合いとか、そういったミクロの話題が出てきて、やっぱりテロを防ぐのは不可能ですねという結論に至る。で、テロリズムそのものを根本から抑えなければならないからイスラエルがパレスチナに譲歩すべきとか、アメリカは撤兵すべきとか、そういうマクロな話題が出てきて、アメリカやイスラエルへの悪口が溢れた挙句にスルーされておしまいになる。

アメリカ撤兵論のうち典型的なものをちょうどクルーグマンがNYT(7月1日付)に書いている。曰く、米軍のイラク駐留がイラクをテロの温床にしている、イラク社会・経済の再建は安全性が確保できないために停滞している、外人テロリストに絶好の目標として利用されている。だから、今後イラクがより反米、反イスラエル的な、それほど民主主義的でない国家になってしまったとしても、撤兵によってテロの脅威は減るはずだ、という主張だ。

この意見自体は基本的にまっとうなものだと思う。「イスラムの内なる戦い」で書いたように、筆者はイラクへの派兵がテロ横行の決定的な原因だとは必ずしも思っていないのだが、少なくとも一因であることには疑問の余地がないし、米軍が撤退したほうがテロの脅威が減るというのもそれはそうだろうと思う。

ただ、これらの意見は決定的に先進国から、アメリカサイドからのものだ。アメリカ(とその同盟国)の市民としては、イラクが今後どうなろうと、自分の生活が安全になったほうがいいに決まっている。しかし、イラク国民にとって見たらどうだろう。イラク人の武装警察の練度も低いままアメリカという重石が取り除かれたとき、イラク政府は治安を維持できるのか?クルド人やスンニ派、シーア派の軋轢を解決できるのか?最悪の場合、イラクが3つに分裂して、その後ろにサウジ、イラン、トルコがそれぞれ陣取るという泥沼一直線のシナリオだって考えられる。どうせまたフランスは嬉々として武器を売り歩くのだろうし。テロリストの数が減ったからといって、飛び交う銃弾の数が減るとは限らないのだ。

念のために書くが、だからクルーグマンの主張は自分勝手だとか、そういうことを言いたいわけではない。知りもしない地球の裏側の他人よりも自分の友人の安全が優先されるのは至極当然の話だし、イラクの生活を守る責任は誰よりもまずイラク人自身にあるということだ。


ムスリム自身のために、彼らが為すべきこと

では、イラクの、または広くムスリムの立場から考えたときに、今回のテロはどのような意味を持つのだろうか?いい気味?まぁそうかもしれない。とりあえずそういう感情的な部分を排すると、この事件でムスリムはまた少し追い詰められた。ブレア首相がテロ直後の演説で言ったように、今回のテロがムスリムの過激派によるものだったとしても、ムスリムの大半を占める(はずの)穏健派はこんなことを望んではいなかった。しかし、「イスラムの内なる戦い」で引用したように、『ムスリムの全ては当然テロリストではないが、残念ながら最近のテロリストのほぼ全てがムスリム』である以上、ムスリムに対する風当たりは強まらざるを得ない。さらに、もし本当に米英その他がこの不安定な状況を放置して撤兵したら、中東は政治的にも経済的にも相当不安定になってしまう。原油価格上昇による収入増など、軍事費の増大であっさりちゃらだ。異教徒を追い出したという自己満足以外に、ムスリムが得られるものは何もない。

だからこそ、今誰よりも早く行動を起こすべきなのはムスリムの穏健派のはずなのだ。ムスリムの権威をハイジャックし、自らの正当化のために利用するテロリストから多くのムスリム穏健派の生活と利益を守るために。再度昔のエントリーから引用するが、『悪魔の詩を書いたサルマン・ラシュディには先を争うように死刑宣告のファトワを出したにもかかわらず、オサマ・ビン・ラディンにはたった1枚のファトワすら出ていない』ことに象徴される穏健派指導者の腰の引け方、極端に言えば怠惰はもっと批判されて良い。ブレア首相の言うとおり、このテロに多くのムスリム教徒は一切の責任を負わない。しかし、ムスリムの指導者も責を負わないかといえば、やはり違うだろう。軒先をならず者に乗っ取られているのに、奥の座敷で茶をすすっている(しかも、ならず者を追い出し得る武器を携えているにもかかわらず)者を被害者として免罪するのは筆者としてはやはり違和感がある。


本日のまとめ

テロを根本から抑止するために撤兵すべしというのはアメリカとその同盟国の視点からは正しいが、イラク及び中東の視点ではあまり望ましくない(宗教的な見地を除く)。

イスラムの名の下に民間人を殺し続けるテロリストからムスリム教徒の利益(宗教的な正義感を越えた、広義の利益)を守る責任を、穏健派の指導者は負っている。そのことはもっと強調されて良い。

とりあえず、日本のマスコミの論調はなんとかならないのだろうか。マジメに仕事しようよ。


注:このエントリーは、7月9日のロンドンでの爆弾テロがムスリムの過激派によるものだという報道が正しいことを前提にしています。

追記:ついでなので(なんだか内容が薄くて気が引けました)、Financial Timesのコラムニストであるフィリップ・ステファンスのコメントから、筆者が気に入った段落をいくつか紹介しておきます(訳は筆者)。あくまでも筆者の好みに過ぎませんが、これを読んだ後で日本の社説を読むと色々と味わい深いものがあるかと(タイムスタンプにあるように、このコメントは事件当日の夕方に書かれたものです)。

『テロの起こるその現場でテロリストに立ち向かうということはもちろん非常に重要なことだ。だが、同時にそれは為すべき対応の半分に過ぎない。2001年9月11日のあの事件以来、我々は軍事的な勝利の重要性と無意味さとの双方を目の当たりにしてきた。欧米各国の情報部はニューヨークとワシントンであの事件を引き起こしたアルカイダ関係者の大半を拘束ないしは特定したと言っている。しかし、聖戦主義者たちは組織を分散型の、相互に補強しあう柔軟なネットワークに組み替えた。これはもう戦場で倒しうる敵ではないのだ』

『しかし同時に、政治的な対策が全てを解決しうると考えるのも馬鹿正直に過ぎる。過激な聖戦主義者の残忍な(西側の用語で言うなら、ファシスト的な)野望は、既に物事の道理や政治的な妥協をまるで受け付けない次元で広がってしまっている。パレスチナでの正義、チェチェンでの平和、イラクでの自由と自主独立、そしてアフガニスタンでの独立政府といった問題について、彼らのイデオロギーは既に無関心なのだ。これらの人々に対して、武力が不十分な対応であることは確かだが、同時に恐らく唯一の対応策でもある』

『今政治が為すべきことは、テロリズムの火を燃え上がらせる「酸素」となっている、イスラム世界が不正義ないしは抑圧と感じている問題を解決し、聖戦主義者への人材の流入を絶つことだ。例えパレスチナとイスラエルの問題が解決したとしても、今テロリストとなっている者達をテロの道から引き離すことは難しいかもしれない。それでも、彼らの子供たちを別の道へと誘うことは出来るだろう』

引用元:
Philip Stephens: No quick fixes
By Philip Stephens
Published: July 7 2005 19:48 | Last updated: July 7 2005 19:48

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Comments

一応、引用部分の原文をリンク切れ対策として転載しておきます。誤訳その他の指摘は大歓迎です(というか、誤訳リスクのヘッジのための転載です)。

In any event, vital though it is, the fight on the ground against terrorists can only ever be half an answer. The experience since September 11 2001 testifies to both the strength and weakness of military victories. Western intelligence agents will tell you that most of the al-Qaeda figures behind the attacks on New York and Washington have been caught or isolated. But the jihadists have reinvented themselves as a series of loose, mutually reinforcing and quite separate networks. This is not an enemy that can be defeated on the battlefield.

It would be equally naive to say that politics holds all the answers. The brutal and, in western terms, fascist ambitions of the extreme jihadists stretch way beyond reasoned argument or political accommodation. Their ideology is indifferent to justice for the Palestinians, to peace in Chechnya, freedom and self-determination for Iraqis or self-government in Afghanistan. Force is an insufficient response to these people but it is probably the only one.

The role of politics is to starve them of recruits, to deprive them of the oxygen provided by a widespread perception of injustice and oppression in the Islamist world. If a settlement, say, between Israel and the Palestinians would not deter the present generation of terrorists, it might well set their sons and daughters on a different path.

Posted by: 馬車馬 | July 10, 2005 at 09:38 AM

フィリップ・ステファンスのコメントの最期の段落部分は特に同感です。

結局、そこが解決されない限り中東の人々の不満が収まる事は無いし、テロが止む事もありえないと思います。

ムスリム同士の事は正直あまり良く分からないのですが、スンニ派とシーア派でもアメリカに対する温度は違うでしょうし、イランとサウジとイラクといった地域や過去の履歴でもいわゆる『穏健派』の立場や意見は分かれてるでしょうし。(私も違いの詳細は把握してませんが・・・。(汗))

これは聞きかじりなのですが、キリスト教でいうローマ法王の様な存在がいない事も現在の状況を作っている一因でもあるのでしょうかね。(モハメッドの後継者が誰かだけでも宗派の間で一致してないようですし) いればいたで心労で倒れそうですが・・・。^^;

Posted by: 名無之直人 | July 11, 2005 at 11:07 AM

あと、『イスラムの内なる戦い』も今、後から読み終わっての追加コメントなのですが、いくら穏健派の指導者でも、彼らだけに期待を負わせるのは荷が勝ち過ぎる状態になっているのじゃないかな、と思います。

つまり、実際にはテロに出ない人が大半にしろ、911テロ自体には喝采を叫んだ人が多かったとしても、指導者にその責を求めるのは厳しいのじゃないかなぁと感じるのです。イラク戦争の経緯にしても、イランの核開発中止を求める国際的な動きにしろ、そして相変わらずなイスラエル情勢にしろ、破壊的な行動には出ない人が大半であっても信者達のハラワタの中は煮えくり返っている時、指導者に出来る事としては、信者達が暴走しないように必死でたずなを引き締めることが精一杯であって、その暴走を防ぐ為には、指導者として『我々はテロという行為には訴えないが、アメリカやイギリス(やイスラエル)の行為は支持しない』くらいのコメント出しておかないと自分の身が危ないと感じているのではないでしょうか。(アンケート数字とか見てないので実際の所は分かりませんが・・・。)

オサマ・ビン・ラディンにたった1枚のファトワすら出ていないのは、結局そういった信者達からの反発が怖くて、いくら穏健派の指導者達でも出せない状況にあるからではないかと。(単純な考えですが)

彼らがファトワを出せるようになる為には、犠牲を強いられてきたイスラム社会に対してアメリカやイスラエルから実効を伴い、かつ一時的でなく恒久的な譲歩を引き出して、いくらかでもムスリム側の溜飲を下げてからでないと無理じゃないかな、と。そしてそれは起こりそうにないので、穏健派指導者達もオサマにファトワを出せない日々も続くのじゃないかな、と思います。

Posted by: 名無之直人 | July 11, 2005 at 11:49 AM

フィリップ・ステファンスの最後の段落に同意です。しかし、それを最も努力しなければいけないのは欧米ではなく、ムスリム達でしょう。確かに彼らムスリムには多少同情を禁じえない過去があり、欧米が彼らのテロの標的になるのは因果応報的な部分も少なくないのかもしれません。しかし、感情によって暴走を続けるイスラム原理主義者たちを因果応報だからといって許せるでしょうか。それらのせいでテロが起こってるんだから我慢すべきだとでも?
このままいけば一番損をするのは馬車場さんの言う通り、原理主義者でない普通のムスリムたちであることは火を見るより明らかです。その時、今まで武器を持ちながら何もしてこなかったイスラム聖職者たちに、命の危険があったのだから全く責任がないと言えるでしょうか。
ムスリムの問題はムスリムが解決すべきであって、ここで何を言っても余り意味はないし、日本がテロの標的になってない現状では他人事だし、今の状況で中東諸国に下手に力をつけられても困る事の方が増えそうですが、中東に限らずどんな国でも、感情で物事を解決しようとする限り彼らが今の状況から抜け出して繁栄を手にする事は永遠に出来ないでしょう。

Posted by: のぶー | July 11, 2005 at 05:40 PM

やっぱりイスラムの問題の難しさは、彼等が統一された組織ではないということでしょう。国家としてもバラバラだし、宗教的な権威というのもバラバラで、ローマ法皇みたいな存在がない。なので、テロを根治するというのは非常に難しいことだと思います。その原因も単純にパレスチナだとかイラクだとか
言えないでしょうね。

今度、国連の安全保障理事会を拡大するという話になってますが、現常任理事国はもとより、G4を加えてもイスラム国家は一つもありません。キリスト教国家がいつくあるかは言うまでもないことです。イスラムというのがこれだけの人口と潜在的なパワーを持ちながら、国際的な政治、経済においては分裂しており、軽視される存在でしかない。そのためパワーがテロといった形で噴出しているとも言えるのかもしれません。

あるイスラムの専門家が、イラク戦争前のイラクに独裁はあったが、テロリストはいなかった。テロリストがいたのはアフガニスタンだった。あの戦争の後にイラクはテロリストの巣になってしまったという話をしていましたが、
考えようによっては、フセインを潰した結果が今のテロなのかもしれません。フセインの野望、すなわち、近代化を志向し、イスラム勢力を統一する、をつぶした事が今の結果につながっているような気がします。

こういう事を書くと不謹慎かもしれませんが、テロで死ぬ人間の数というのは戦争で死ぬ人数に比べれば少数です。つまり、テロが増えたとしても、統一された巨大なイスラム勢力が湾岸の石油を独占するよりは、キリスト教勢力(あるいはユダヤ勢力)にとってはマシであると、そういう事なんじゃないかなと思います。

Posted by: のびい | July 12, 2005 at 06:09 AM

名無之直人さん、コメントありがとうございます。

テロの当日に、あの強烈な映像を見せられながらああいうバランスのとれたコメントが出てくるというのがなんとなくイギリスらしいと思えます。

おっしゃるとおり、ムスリムを過激派と穏健派に二分して、互いの利害が相反していると定義してしまうのは単純化が過ぎるのかもしれませんね(難しいのは、その単純化の過程で失われたピースが何であり、その重要性がどの程度であるか、なわけですが)。

後半部ですが、国民レベルでの「被害者意識」が宗教(同時に政治)レベルでの意思決定に決定的な影響を及ぼしている、とは考えたくない気持ちがあります。そうするとムスリム全体に問題がある、という結論にたどり着きかねないので・・・それは救いがないな、と。

アメリカやイスラエルにしても、「ムスリムの溜飲を下げるために」譲歩をするということはありえないわけで(どこまで譲歩すればムスリム全体の溜飲が下がるかが分からないため)。結局、「ここまで譲歩したらムスリムは我々が責任を持って説得する」という約束をムスリム指導者がしなければならないわけで、この段階で実はムスリムの被害者意識はアメリカが解決する問題ではなく、ムスリム指導者が解決すべき問題にならざるを得ないと思うわけです。

Posted by: 馬車馬 | July 14, 2005 at 12:00 AM

のぶーさん、コメントありがとうございます。

おっしゃることに私も同感です。ムスリムを説得できるのはムスリムだけであり、そのイニシアチブを取る覚悟を取って初めてアメリカやイスラエルから譲歩を得ることが出来る、というかそのための交渉のテーブルにつくことが出来るのだと思います(このあたりは上のコメントで書いたとおりです)。

ある種の英雄願望なのかもしれませんが・・・その意味では私の意見は安易な考えかもしれませんね。ただ、現時点ではちょっと他に思いつきません。

Posted by: 馬車馬 | July 14, 2005 at 12:08 AM

のびいさん、コメントありがとうございます。

ご指摘の通り、指導者の怠惰というよりも指導者の不在が問題であるということなのかもしれませんね。ただ、その結果として国際的な発言力が損ねられていたとしても、それは君たちの問題だとしか言いようがないわけですが・・・

ある意味、フセインは金正日と同じく、大貧民爆弾の安全弁として機能していたのではないかと思います。実際には彼の統治はアメリカの外交戦略を見誤った、ないしははめられた挙句のクウェート侵攻以降破綻しており、うまくいっても彼の死とともにタガが外れたと思いますが、アメリカの侵攻でそれが早まったのではないかと。

テロというのは大貧民爆弾の炸裂のひとつの形なのかもしれませんね。

私はブッシュ政権はクリントン政権よりも平均値のベースで世界を平和にしたのではないかと思っているのですが、実証できる統計が見つからないので書けずにいます(仮説としての理屈はあるわけですが)。

それにしても、テロリストはイギリス在住ですか。あの好景気の国で生活に行き詰っていたとは考えにくいので、純粋に宗教的な理由でしょうか。救われないですね。

Posted by: 馬車馬 | July 14, 2005 at 12:30 AM

結局、「ここまで譲歩したらムスリムは我々が責任を持って説得する」という約束をムスリム指導者がしなければならない、というのは非常な正論だけれどもムスリム全体という形での具体化は難しい為、パレスチナ対イスラエルといった形で、個別に進めていくしかないでしょうね。

現在進行している撤退や自治権限委譲プロセスが、自爆テロなどが起こる度にイスラエルの報復再侵攻を呼び込んでしまっているように、組織としては自爆テロなどを行わないと表明していてさえ、極少数の衝動に駆られてしまう人々を完全に止める事は現実的に出来ていないようですし。

『それが出来ないならお前を交渉相手(つまりテロをコントロールできるという能力の持ち主)として認めない』というイスラエルの意見に反論できなくなってしまうと、結果的に損をするのはやはりムスリム(この場合はパレスチナ側)になってしまう。

その現状は少数の苛立ちをさらに高め、テロの発生の連鎖は止まらない。(のかなぁ・・・)


そう考えるとイスラエルがガザ撤退を一方的に決めた事とかも、少なくとも譲歩の姿勢を見せることによって、和平プロセスのボールを反イスラエル側に渡してしまい、『あとはあなた達の側の努力次第ですよ』という姿勢を見せるのは正しい交渉術なのでしょうね。


だからイラクからの早期撤退というのは、治安の良くなった州から米英軍を順次引き上げていき、治安の悪い州を囲い込みしたり国境地帯を固めるといった形で、自分達が標的になる機会と理由を減らしていく方が結果としても情勢は早期に安定していくのではないかと思います。(スンニ派とシーア派の争いなどに外国勢が挟まれるのは損でしかないので。クルドはクルドで宗教というよりは民族的な問題でしかも周辺諸国の不安定要素でもあるので、その意味でも、問題を個別に潰していくしかないのでは無いかと思います。)

Posted by: 名無之直人 | July 14, 2005 at 06:01 AM

確かに、貧困とテロリストへの道は大いに関連はあると思います。
そういえばアイルランドなんてかつてはテロの国だったのに
今や世界で最も富裕な国のひとつとなりましたね。

イスラム圏には富裕な国もありますが、石油収入に頼っている
だけで、概ね貧富の差も激しく、東アジアのように貧困から脱却して
産業化に成功している国はあまりないようですね。
サウジのように親米的な政権がある大国でも政治的には
民主的とはいえず、完全に民主化してしまったらビンラディンが大統領に
なりかねないとか(笑)。

しかし(ブッシュ政権に限らず)米国にしても欧州にしてもイスラムの強力な国家ができることは望んでいないように思います。市民の反発がありながら敢えてトルコをEUに加盟させようとしているのは、やっぱりトルコがイスラム原理主義化してイランに接近したりすることは望まないという事なのかもしれないなと思ったりしています。

やっぱり話し合いで統一をするという事はそうそう簡単な事ではないので(EUを見ててもそう思います)、まあ「イスラム帝国の再興」は有り得ないことでしょう。どこかの国が台頭してきたら欧米が潰すでしょうし。

以前、米国はエネルギー資源を重視してそれ以外の所はスルーするだろうと書いたら、そんな事はない、民主主義を守るためだから、、と書かれていた方がいましたが、矢張、北朝鮮の方は平和的に解決する方向になってきました。日本にとっては喜ばしいことです。

しかし、イラクにしても、あるいは将来イランの政権をまた潰すにしても、
かなり面倒な事になるでしょうね。父ブッシュのやった湾岸戦争は
米国にとっても戦略的な意味は大きかったと思われますが、今回のイラク戦争はやや高くついたのではないかと思います。
まあ何が起こっても日本は米国に黙ってついていくだけですが。
多分それが日本にとっては正しい道でしょう。

Posted by: のびい | July 14, 2005 at 06:19 AM

http://pewglobal.org/reports/display.php?ReportID=248
Islamic Extremism: Common Concern for Muslim and Western Publics
Support for Terror Wanes Among Muslim Publics Released: 07.14.05

Posted by: foo | July 15, 2005 at 01:17 PM

こんにちわ。馬車馬さんの記事に触発されて、つらつらと考えてみましたが、結論のようなものはかなり憂鬱なものでした。まあ、ふだんあまり深くは考えてみないことでしたので、今回の記事はわたしの頭の整理のいい機会とあったようです。
個人的なムスリムとの接触はたった一度ですが、ある立食のレセプションの主催者側にいたわたしは数人のムスリムと話をしましたが、かれらが料理を口にしようとするたびに、これには豚肉はつかわれてないよね、と何度もくどく訊くのに辟易したことを思い出します。結局、なんども保証したにもかかわらず、ほとんど料理には手がつけられなかったのではなかったかなあ。

Posted by: かわうそ亭 | July 18, 2005 at 11:43 AM

名無之直人さん、こめんとありがとうございます。

ムスリム全体での意見の取りまとめは難しいでしょうね。だからこそ、彼らの政治的発言力は大きくはならないし、そのことに被害者意識をもたれても困るんですが。

イスラエルが譲歩しやすいのは、いつでもガザに再侵攻するだけの覚悟と軍事力とを持っているからだと思います。いつでも取り返せるぞ、という態度を取れるからこそ、相手側にボールを投げることが出来るのかな、と。半端なボールを返してきたら手痛いスマッシュをかますぞ、と言っているようなものですから。アメリカにとって今のイラクが同じ状況なのかはちょっと良く分かりません。でも、アメリカもかなり「覚悟を決めた」国なので、名無之直人さんのおっしゃるやり方もワークするような気がします。

Posted by: 馬車馬 | July 19, 2005 at 01:03 AM

のびいさん:

とりあえず、あれだけの資本・資源を持っていながらここまで経済成長に失敗しているというのはどういうことだ、という思いはありますね。普通、経済成長の最大の制約条件は資本ですから・・・。彼の国の人々は先進国が搾取しているから、と言うのかもしれませんが・・・

イスラムの統一国家、というのも微妙に気持ち悪さがありますが、パワーバランスという観点からは単純になっていいなぁ、という気もします。ただ、原油を一国が寡占することを周囲は絶対に許さないでしょうね。その点については、日本も立場は同じだと思います。特に、OPECの短視的な生産管理のやりかたを見ていると、こいつらに原油の一括管理をゆだねるのは日本にとっても危険すぎると思います。

Posted by: 馬車馬 | July 19, 2005 at 01:28 AM

fooさん、情報ありがとうございます。

少なくとも、事態はいい方向に向かっていると信じたいところです。後は、こういった「サイレント・マジョリティー」の声をくみ上げる指導者が出てくるかどうかな訳ですが・・・ないものねだりなんでしょうかね・・・

Posted by: 馬車馬 | July 19, 2005 at 01:31 AM

かわうそ亭さん、コメント&TBありがとうございます。触発とおっしゃって頂けると当方はうれしい限りです。文章を書いている甲斐があるというものです。本文についてはそちらのブログでコメントさせていただきたいと思います。

私にもムスリムの友人がいますが、中央アジア出身のせいかそれほど戒律には厳しくなかった感じですね。多分豚肉は避けていたのでしょうが、良く飯を一緒に食べていてもそういうことに気がつくことはありませんでした。酒もがぶがぶ飲んでましたし。断食はまじめにやってましたけどね。インド人の方が神経質だった印象があります。私が牛肉を炒めていてもやな顔をされましたから(笑)。まぁ、ひとそれぞれなのでしょうが。

Posted by: 馬車馬 | July 19, 2005 at 01:38 AM

馬車馬さん

こんばんは。
先日、アラブの某国に住んでいる人と
話す機会がありました。
これらの国の人たちは、はっきり言って、
クラフトマンシップに対する尊敬が欠如しているので、
工業化は絶望的だということです。
石油というタナボタで豊かになっても
どうしようもないというのが彼の意見でした。

まあインドですら最近経済成長を始めたんで
こういう意見も極論だと思いますが。

それにしても最近テロだらけで。。

Posted by: のびい | July 25, 2005 at 07:24 AM

のびいさん、コメントありがとうございます。

私がよく飛ばす与太の一つに、「暖かい国は経済成長できない。食い詰めても海岸でバナナもいでいれば生きて行けるから」というのがあります。クラフトマンに対する理屈抜きの敬意は私なども持ち合わせている(というより、モノを作っていないというのは文型人間としては絶対的な引け目なわけです。親が理系だからということもありますが)わけですが、こういった敬意というのはどこに端を発するものなのでしょうね。

バナナどころか石油まで出てしまうと、汗水たらしてモノを作る尊さみたいな倫理が出来にくそうな気はしますが、逆に言うと今の日本だってバナナの代わりに賞味期限切れのコンビニ弁当が転がっているわけで、ミクロなレベルでは同じ状況なわけですよね。単純に歴史的経緯とか言ってしまうのもどうかと思いますし。

テロは・・・どうも移民の子が中心になっている節がありますが・・・コモンウェルス出身ではなくアフリカ出身者が多かったのはイギリスにとっては僥倖だったのかもしれませんね。僥倖というにはささやかですが。

Posted by: 馬車馬 | July 31, 2005 at 01:06 AM

台湾なんかはバナナもとれるのに工業化で成功したというのはやっぱり立場的な危機感のなせる業でしょうね。

南北というよりは、欧州でみても、ノルウェーとかイギリスとか石油のとれる国はなぜか工業はダメですね。たぶんその国の工業力以上に通貨が強くなってしまうからでしょう。UAEあたりは金融を次の柱と考えてるようですが、UAEの事は殆ど知らないのでうまくいくかどうかはしりませんが考え方としては正解のような気がします。日本も既に工業と金融の2本柱になってますし。

日本で戦前は軍人が尊敬され、戦後は輸出につながる製造業が尊敬されてきたというのはその時々の状況によると思います。馬車馬さんの所はそういう意味で王道なんじゃないでしょうか。

Posted by: のびい | October 23, 2005 at 10:54 PM

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