統計には誤差があるんですってば
このブログは最近は隔週刊を目安にしているので、今日はエントリーを書く気はなかったのだが、週末にこんなアツいネタを用意されてしまっては書かないわけにも行かない。これは何かの挑戦ですか朝日新聞社。
要するに、朝日新聞社の社員が小泉首相の靖国参拝についての世論調査の解釈を巡って大激論の末に乱闘騒ぎになって警察が呼ばれた、というしみじみと味わい深いイベントがありました、ということらしい。ただ、筆者はこの乱闘騒ぎそれ自体についてどうこう言うつもりはない。オトコノコたるもの、拳で友情を語り合うのは至極自然な事である。日本が誇るクオリティペーパーの社員が40になっても青春の輝きを保ち続けていたという事実に、筆者は日本の将来の明るい輝きを見た思いがした。後は来月あたりに、彼らが肩を組んで夕日へ向かって歩み去る姿を築地界隈で見る事が出来るかどうか、それだけが関心事だ。
で、一体彼らはどんな問題にその青春の熱い血潮をたぎらせたのかねと思って記事を読み進むと、(世論調査の)『結果は「よかった」が42%、「するべきではなかった」が41%とほぼ拮抗(きっこう)。関係者によると、この微妙な解釈をめぐって大ゲンカとなったという。』 待てコラ。何をどう間違えたらこれが喧嘩の種になるのか。他のどんな問題で喧嘩になっても構わないが、この問題で、世論調査部という統計処理の担当者が喧嘩をすることだけはありえない。というか許されない。
とりあえず、読者の皆様に筆者の脱力感を共有していただくために、以下少し世論調査の読み方を説明したい。お付き合いいただければ幸いだ。(10月26日:文末に重要な追記)
アンケート調査の読み方
どんなものであれ、アンケート調査というのは「ごく一部の人たちから意見を聞き、その結果から全員の意見を類推する」という作業だ。もちろん、全員に端から聞いて回れるならばそれが良いに決まっているが、何かを知るためにいちいち1億2000万人に聞いて回っていたのでは手間とコストがかかりすぎる。で、しょうがないので1億2000万人の中からランダムに何千人かのサンプルを選び、その調査結果が1億2000万人全体の動向を反映していると考えるわけだ。
で、当たり前の話だが、こういうやり方にはどうしても誤差が付きまとう。靖国参拝の賛否を問うにしても、もしかしたらものすごい確率で靖国参拝反対の人にだけ電話をかけてしまい、反対が100%になりました、という可能性だってゼロでは無いのだ(ただし、もし1億2000万人の半分が賛成だったとしたら、1000人に電話調査をかけて全員が反対と言う確率は0.00…ゼロが300個続く…009%に過ぎないのだが)。1億2000万人全員に聞いたら賛成が45%だった時に、1000人だけに聞いたら42%になりました、なんてことはごく普通にあると思わないだろうか。
つまり、世論調査を読むときには、その数字には所詮1000人分の結果に過ぎず、1億2000万人分の結果とは違う可能性があるのだ、ということを絶えず考えておかなければならない。では、今回のように賛成42%、反対41%という結果が出たときに、ここから日本国民全体の支持率をどう推測すればいいのだろうか?ここでちょっとしたテクニックを使うのだが、そうすると以下のような数字が計算できる(計算の仕方は文末)。
本当の支持率が41.6%から42.4%の間にある確率は20%
本当の支持率が40.9%から43.1%の間にある確率は50%
本当の支持率が39.4%から44.6%の間にある確率は90%
本当の支持率が38.9%から45.1%の間にある確率は95%
本当の支持率が38.0%から46.0%の間にある確率は99%
本当の支持率が0.0%から100.0%の間にある確率は100%
つまり、1億2000万人のわずか0.001%の意見を調べただけでも、1億2000万人全体の支持率について、かなり正確な推測が出来るということだ。で、通常は慣習として「本当の数字がこの範囲内にある確率は95%」となるものを誤差として採用する。つまり、42.0%±3.1%が一般的に誤差と呼ばれるものだ。専門用語を使って「信頼区間95%で誤差±3.1%」という言い方もする。
さて、これで冒頭の筆者の脱力をご理解いただけるのではないだろうか。1%の差なんて余裕で誤差の範囲内なのだ。賛成42%、反対41%から導き出せる結論は「賛成も反対も大体同じくらいなんじゃないすか」ということだけで、どちらが多いかなど結論が出しようがない。きれいに数字で結果が出ているのだから、激論の余地などこれっぽっちも存在しないのだ。そんなネタで警察呼ばれるほどに盛り上がったというのでは、間抜け以外に形容する言葉がない。
ちなみにこれは統計学の基礎の基礎であり、経済学部か商学部であれば大学1年生の必修科目に入っているはずだ。よりにもよって世論調査の担当者がそれを知らないというのはどういうことだ。乱闘がどうのというのも十分恥ずかしいが、統計を毛ほども理解していない人間が世論調査を作っているという事実はそれと同じくらい恥ずかしい話だと思うのだが。
あまりにもマナーがない日本の新聞
ちなみに、このエントリーを書いていてもう一つ呆れたのが、朝日新聞の世論調査についての記事にアンケート調査の概要が載っていないことだ。上の誤差の数字はサンプル数によって大きく変わる(サンプル数が300だと誤差は±5.6%、サンプル数が3000だと±1.8%)。それも載っていないのでは読者は判断のしようがない。それに、1500人に聞いて有効回答数1000人、というのと5000人に聞いて回答数1000人、というのとでは解釈が全く変わってくる。それはなにか答えにくい質問であって、それに答えられる少数の人(例えば暇人)の意見だけが結果に反映されていると考えねばならないからだ。当然、調査結果の信頼性は低下する。
そもそも、このエントリーで計算した誤差の数字など、本来新聞社が提供して然るべき数字だ。The Economist誌は当然にそうしていたし、朝日新聞をしのぐネタ新聞として名高い朝鮮日報ですら必ず誤差の数字を載せている(例)。なのに、筆者は日本の新聞でそれをやっている例を見たことがない。もしかしたら「読者のニーズがないからだ」という反論を受けるかもしれないが、これはそういう問題ではない。統計調査をする者が最低限守るべきマナーの問題なのだ。
そんなわけで、日本の新聞がそういう情報を明かさないまま世論調査の数字にいい加減な解説を加えているのを見るたびに、「読者なめんな馬鹿」と独り憤慨していたのだが、どうやら筆者の考えは間違っていたようだ。彼らは読者を舐めていたのではない。知らなかったのだ。よりにもよって総合研究本部世論調査部の担当者が。大学1年生レベルの基礎の統計学を。これを予想の斜め上っていうんでしょうか冨樫先生。
とりあえず、朝日新聞はこの世論調査部だけでも伊勢丹化計画を実行した方が良いと思うのだが。1ヶ月前は与太話として書いたのだが、今はわりと本気だ。
本日のまとめ
統計調査は必ず誤差を伴う(サンプル数が1000前後で、支持率その他が5割近辺であれば、誤差は大体±3%くらいになる)。
世論調査のサンプル数や誤差を表記するのは最低限のマナーだが、朝鮮日報ですら守っているそのマナーを、日本の新聞は守っていない。
それ以前に、調査の担当者がごく基本的な統計学を理解していない。
追記:誤差の簡単な計算法は以下の通り(信頼区間95%の場合)。
1.96 × { p × (1 - p) ÷ n}^0.5
pは支持率(またはそれに類するもの。40%ならp=0.4)、nはサンプル数。^0.5は0.5乗またはルートのこと。信頼区間99%を計算したい場合は1.96の代わりに2.58を使えばよい。
ビデオリサーチ社のテレビ視聴率がサンプル数2000前後らしいので、それで視聴率15%(p=0.15)の番組の誤差を計算すると、コンマ以下の数字の動きに一喜一憂するのがいかに馬鹿馬鹿しいかが分かると思う。
追記2:ここまで書いて、乱闘というのは片方が一方的に殴っただけだったということに気がつきました。そうなると冒頭の文章はちょっと違和感がありますが、どうせ与太だということで放置させてください。
追記3:以上の統計誤差の議論は、アンケート調査それ自体は完璧に行われたという仮定に基づいての話で、アンケート調査のやり方に問題があれば当然誤差は拡大します。Y売新聞の世論調査のバイトをしているという方が書かれたエントリーを読んでしまうと、もう誤差をどの程度取ればよいのか想像も出来ません(この点はぶらいあんさんのコメントも参照してください)。というか、ここまで杜撰だとは流石に思いませんでした。これはもう読者と統計学に対する重大な背信行為でしょう。もう内閣府の世論調査以外は無かったことにするのが正しいのかもしれません(こういう「何も信じられない」的な言動は好きでは無いのですが、リンク先を読んでしまうと流石に・・・)。
なお、リンク先のエントリーの信憑性は私は高いと考えています。というのは、毎回毎回世論調査で読売新聞の内閣支持率が朝日のそれよりも有意に(=統計誤差を考慮に入れても)高く出ているという事実が傍証となっているからです。本来、どの新聞社が内閣支持率を聞いても、その数字にはほとんど差が出ないはずです。それが5%以上の開きが出る確率は極めて低く、それが常態化しているということは「朝日か読売、もしくは双方の調査の仕方が間違っている」ことの証明になります(統計的に断言できます)。所詮傍証、という見方もありますが、無視すべからざる事実だろう、ということで。


Comments
御意。朝から笑ってしまいました。
朝日新聞のような会社にはいる人って、統計学などの基礎的な勉強よりも作文練習などに血道を挙げている場合が多く、基礎的な学問をちゃんとやっていない場合が多いように感じます。
ふと、5-6人の顔が浮かんできた。統計学の基本を知っている人も社内的にはいるのでしょうが、記事内容に対する発言権はたぶん皆無だろうと思います。
Posted by: miyakoda | October 22, 2005 at 09:59 AM
不謹慎ですが、ちょっと笑っちゃいました。
以前、ちょっと新聞の支持率統計を調べたんですが
公表されているデータが少なすぎて困ったんですよね。
問い合わせれば、
データを提供してくれるみたいですが
ネットになら無限の空間があるわけですから
しっかりデータは載せて欲しいですよね。
Posted by: pal | October 22, 2005 at 02:13 PM
まぁ、昔から日本の新聞は言葉の(報道の)意味よりも、その「雰囲気」ばかりを重視してきましたからねぇ。
当事者も、統計調査の「解釈」ではなく「数字のもたらす雰囲気」を巡っての喧嘩であることくらい自覚してるような気がします。
Posted by: ■□ Neon / himorogi □■ | October 22, 2005 at 02:14 PM
朝日新聞の件て、そういう意味で喧嘩になったんですか?見出しや記事本文などでどういう表現をするか(同じ数字でも全く異なる印象を与えることが出来る>これを解釈と呼んでいる、統計結果の解釈とは用語の使い方が異なる)が争点だと思ってましたが。
慣習的に新聞報道等で正しいデータが提供されていないというのは同意しますが、なにか今回の記事はこじつけじみた印象を受けました。書き出しが面白かっただけにちょっと。
Posted by: ええっ? | October 22, 2005 at 10:34 PM
初めて、コメントいたします。わたしはこの事件は数字の解釈で争ったんじゃないと思います。
>「よかった」が42%、「するべきではなかった」が41%とほぼ拮抗(きっこう)。
このデータを記事として採用するか否かで、争いになり最終的に殴りあいになったんじゃないかと。
結局、記事としては採用されずに終ってますし(40代が勝った結果か?)
Posted by: sdoi | October 23, 2005 at 02:38 AM
本文↑にてご指摘の通りですな。
私、医学研究者なんですが、文系でも(失礼!)ちゃんと統計解析の基礎は習うんですか。そうですか。
いやー、マスゴミさんの報道やらみてるとN数は出してないし、統計手法は明示してないし、95%CIも出してないし…てっきり、そんなことは知らないでやって居られるのかなあ…と。
例の「朝日新聞は世界の新聞で8位」云々というアンケートですか、あれも母集団のdemographicsが気になりますねえww
Posted by: 独立行政法人の石 | October 23, 2005 at 10:53 AM
この件に限らず、新聞記者って無知の馬鹿が多い、しかも知らないなら知らないなりに調べたり学習しようとしない人間が少ない気がするのですが。
取材を受けるたびに感じるのですが、政治部の記者なのに政治的時事問題の論点すら理解していなかったり、取材中は「分かってます」的なそぶりをしながら、後で記事を見たら全然違った事を間違って書いてたりと、もうウンザリさせられっぱなしです。
そのレベルの低さは、朝○新聞だろうが読○新聞だろうが、どこぞの地方紙だろうが、揃いも揃って低いレベルで均一していて、とてもじゃないがプロ意識がみられない記者だらけというイメージです。
Posted by: くれふ | October 23, 2005 at 05:00 PM
>知らないなら知らないなりに調べたり学習しようとしない人間が少ない
正しくは「知らないなら知らないなりに調べたり学習しようとする人間が少ない」ですね。
失礼!
Posted by: くれふ | October 23, 2005 at 05:01 PM
>この件に限らず、新聞記者って無知の馬鹿が多い、しかも知らないなら知らないなりに調べたり学習しようとしない人間が少ない気がするのですが。
多分、自分が知らない、ということを知らないのではないでしょうか?
Posted by: どん | October 23, 2005 at 06:06 PM
sdoiさんと同意見。以下は勝手な憶測です。
極東ブログさん記事に記載されてるアンケート結果に、下記のアンケートがありました。
(問)今回の靖国参拝で、中国や韓国との関係が悪化することを、どの程度心配していますか。(択一)
(答)
大いに心配している 17
ある程度心配している 48
あまり心配していない 28
全く心配していない 6
つまり、65%以上の人がある程度以上、心配している、となります。靖国参拝賛否を小さく書いて、見出しに大きく「3分の2の人が靖国参拝による日本と中韓の関係悪化を懸念」と書けば、論点が180度変わります。そういった類いに関しての喧嘩ではないでしょうか。
Posted by: 平手 緑 | October 23, 2005 at 10:25 PM
アサヒの場合、報道機関というより、自らの使命を啓蒙だと思い込んでるフシがあるので、この争いも、解釈論ではなく記事にどのようなバイアスを掛けるかで喧嘩したんじゃないかなー、と思って先のコメントしたんですけどねー。
Posted by: ■□ Neon / himorogi □■ | October 23, 2005 at 10:50 PM
sdoiさん達に賛成。
「そもそも、賛成と反対が同じ位なんておかしい、聞き方に問題があったに違いない」
「いやそんなことはない、現実を見ろ」
みたいな言い争いじゃないですかねぇ。
あ、野暮ですか? こんな突っ込み。
このエントリの主旨自体は、基本ながらちゃんと意識しておきたいことで、非常に有用だと思いますけど。
Posted by: こんぺいとう | October 23, 2005 at 10:51 PM
miyakodaさん、コメントありがとうございます。
こういう基礎知識というのはある程度多数の人が共有していないと意味がないですよね(または、上司が理解しているか)。
作文演習は結構なのですが、仕事していて統計の勉強がしたくなったりはしないのでしょうか・・・
Posted by: 馬車馬 | October 24, 2005 at 01:39 AM
palさん、コメントありがとうございます。
The EconomistなどはWeb版で記事中で言及されたデータ他のソースやリンクをかなり詳細に提供しているんですけどね。
そういう形での付加価値のつけ方はもっと色々試されてしかるべきだと思います。特に今後有料化も視野に入れるならば。
贅沢を言うなら、地域別の回収率とか、そういったデータもつけて欲しいくらいです。
それにしても、やっぱり不謹慎でしたでしょうか(汗)
Posted by: 馬車馬 | October 24, 2005 at 01:57 AM
himorogiさん、コメントありがとうございます。
そういう雰囲気オンリーの議論(厳しく言うなら、それは言葉遊びに過ぎないわけですが)を避けるために統計があるのだと思うんですけどね・・・
統計のことなど何も知らない記者がそういう方向に向かうのはもうしょうがないことかもしれませんが、研究本部調査部の人間がそれでいいんでしょうか・・・
Posted by: 馬車馬 | October 24, 2005 at 02:17 AM
ええっ?さん、sdoiさん、平手さん、こんぺいとうさん、コメントありがとうございます。
皆さんがおっしゃることはもっともだと思います。そもそも、具体的に何が問題だったのかをあのzakzakの記事から正確に把握することは難しく、ある程度推測を入れないと料理できなかったため、あのような構成になっているという側面があります。
(私は彼らが記者ではなく調査部の社員だという記事から、記事として採用するか/どう表現するか、といった問題よりも、統計それ自体が議論の的であったと解釈しました。もちろん、こんぺいとうさんがおっしゃるとおり統計それ自体の信憑性が問題になった可能性はあります。しかしそういうことをデータをとった後に議論するのは無意味ですし、そもそも複数回答とすべきところがそうなっていなかったり、回収率が5割程度だったりと信頼性に疑問符が突きまくっていることが明らかな調査について「微妙な解釈を巡って」乱闘になるという時点で統計学の素養がゼロの人たちと判断しました。もちろん、これが唯一の解釈だとは全く思っておりませんが)
統計誤差の話は前々から気になっていて、うまいネタがあれば書こうと思っていたのですが、いかんせんテクニカルになりやすいのが自分の中でネックでした。それを飽きずに読んでもらうためには文章(と元ネタ)にはそれなりの勢いが必要だろう、ということで、普段のエントリーよりもヘッジ(すぐ上の段落で書いたようなもの)を削って、一気呵成に書き上げたのがこのエントリーです。
挙句追記2で書いたように後になって勘違いに気がついたわけですが、こういう勢いで書いてしまった文章というのは後からどうも修正しづらく、放置することにしました。そういったやり方が皆さんに違和感を感じさせてしまったのかもしれません。そのあたりは私の力不足です。すいません。
とりあえず趣旨については皆さんに評価していただけたようでほっとしています。今後ともよろしくお願いします。
Posted by: 馬車馬 | October 24, 2005 at 02:38 AM
独立行政法人の石さん、コメントありがとうございます。
ええ、一応科目はあるんですよ。必修にしているところも多いと思います。もちろん、理系の人たちのように測度論を下敷きにした本格的な確率論にはノータッチですから、自ずとプロシージャを覚えていく、というスタイルになってしまいますが・・・。
CIも出さないのはやはり何も知らないからとしか解釈できません。『そんなことは知らないでやって居られるのかなあ…』というよりも、知らないからこそ楽に仕事が出来るという側面もあるのかもしれませんね。マジメに統計調査のやり方を勉強してしまうと、今のやり方に我慢できなくなる→でも独りでは現状を変えられないので辛いだけ、ということになりかねませんから・・・。ただ、そういうジレンマに耐えるのがプロのプライドというものだと思うのですが・・・。
Posted by: 馬車馬 | October 24, 2005 at 02:50 AM
文系でも統計学を使う学問はそれなりにありますよ。
まぁ史学とか文学系はまず無いでしょうが、経済とか心理系は必修に入ってると思います。
ただ私立文系の分野になってしまうと、これは高校段階でどの程度受験にあわせてコース分けしてるかによるでしょうが、数学は高校1年ぐらいで受けなくなるケースも多々ありまして、私は国立文系コースから私立への都落ちグループでしたから、数学の素養が最低限ありましたのでそういった大学の統計学にも何とかついていけましたが、クラスの90%は数学がわからんから敢えて来た人たちでしたので「Σ」をみるだけで拒否反応を示しておりました。こういった人たちでも単位はまぁ何とかとれますが理論(というか理屈)から身についている人はそんなにいないでしょう。
実際にゼミなどのより専門的な授業に入るとSPSSなどの専門ソフト(最近でしたらエクセルとか?)で処理させる部分ですしねぇ。丸覚えでも問題ないわけで。
あとマスコミに限らず日本社会は伝統的にあまり統計的手法を重要視していない(社内での例えばマーケティングリサーチというレベルでの話ですが)という側面もあると思います。これは欧米ほど人種や宗教、経済レベルなどにより階層が分かれていないため、直感的に自分はこう思うという程度でも大体それが一般大衆の感覚に合ってることが多いからでは無いからではないかなと思ったりもします。
Posted by: ぽ | October 24, 2005 at 03:12 PM
初めまして。私も以前からマスコミにおける統計の誤りには呆れていたので、今回のエントリーは大変興味深く読ませていただきました。しかし、今回の騒動を統計学に対する理解に限定してしまうのはいかがなものでしょうか。もちろん馬車馬さんが「計誤差の話は前々から気になっていて、うまいネタがあれば書こうと思っていた」ことは理解しますが、そのうえで疑問を述べさせてください。
今回の騒動で注目すべきはアンケートという統計を「データ」ではなく「世論」、もっと平たく言えば「国民の声」として過度に利用しようとするマスコミの体質ではないかと思います。馬車馬さんは「統計を毛ほども理解していない人間が世論調査を作っているという事実」と書いていらっしゃいますが、おそらく世論調査の担当者ですから統計学の基礎くらいは理解しているでしょう。むしろ問題は「理解しているが意見の食い違いが起きた」という点で、それを馬車馬さんは理解不足と考えたわけですが、私はアンケートという「データ」に対してマスコミが誤った利用価値を持っていることが原因ではないかと思うのです。
マスコミは「国民の知る権利」を代行しており、その存在は「国民の代弁者である」という自負によって成立しています。しかし新聞社やテレビ局といった個々のマスコミは発行部数や視聴率に支えられる、いわば「限られた国民」の代弁者にしかすぎません。これは国民の代弁者を自負するマスコミがもっとも認めたくないことであり、だからこそアンケートという「データ」の客観性を利用して、自分たちが「国民の意見に支えられた存在である」ということを誇示したいのではないでしょうか。
このように考えると、アンケート結果の解釈でケンカをするという一般的には考えられない事態が起きた原因は、統計学に無知だからではなくマスコミの体質そのものに原因があるのではないかと思います。そしてそれは今回の騒動に限らない、マスコミが抱える根の深い問題であることが気がかりです。
コメントの方向が「統計学を知っているのかどうか」という点に進んでいるので、あえて問題の本質を考えてみました。もちろんこれは私の勝手な推測ですし今回のエントリーにはそぐわないかもしれませんが、統計学に対する知識の有無に止まらない広い論議を重ねていただければ幸いです。
Posted by: kotarou | October 25, 2005 at 01:29 AM
マスコミが発表するこうした世論調査の誤差扱いは目に余るものが確かにあります。そう思うためにも、一点添えさせていただきます。
このエントリでは統計誤差についての取り扱いをなさっているのでしょうが、実際上の問題点はそういうところではないのだと思います。というのも、せいぜい1000人もの回答があれば、統計誤差と言うのはある程度小さくなるものですから。
>それに、1500人に聞いて有効回答数1000人、というのと5000人に聞いて回答数1000人、というのとでは解釈が全く変わってくる。それはなにか答えにくい質問であって、それに答えられる少数の人(例えば暇人)の意見だけが結果に反映されていると考えねばならないからだ。当然、調査結果の信頼性は低下する。
問題はこのような指摘にあるとおりです。そして難しいのは、これは統計誤差で議論する範疇にはないという事です。記述されていらっしゃる式ですが、これは純粋統計からくる正規分布を仮定したときの標準誤差でありまして、上述の議論からくる誤差はこのような式では見積もれません。ですから、世論調査の結果で本当に大切なのは統計誤差にはなく、系統誤差にあります。
統計誤差と言うのは、サイコロを振るといった純粋実験試行をN回やった時の、確率中心値からずれをいうものでありまして、新聞社がどのような手法を用いてその結果を出したかと言う手法による誤差を勘定する事はできないのです。
単純な話、都市部でのみこのような調査を行ったとか、男性だけでこのような調査を行ったとか、馬車馬さんが指摘されるように、質問内容が適切でなかったとか、あらゆる調査手法からくる誤差というのが、別途見積もる必要があります。固定電話を持っていない人達の意思がその結果に反映されないのは明確であり、そうした民意をいかに数字として組み込むかと言う努力が必要であります。それを見積もらなければ、この結果は誤差の過小評価になりますし、これだけをもって95%CLなんていうのは、馬鹿馬鹿しいものであります。そうした調査手法からくる全ての誤差の合計を系統誤差と言います。
勿論こうした系統誤差を見積もる事は、あらゆる物理実験においても非常に難しい事でありますが、世論調査において、せめて無作為抽出の精度というのがどれだだけあるだろうかという、議論解析なくして、どのような結果も信頼する事はできません。そして、世論調査の多くが、こうした手法において統一されていなかったり明らかにされていない以上、意味のない結果と言えます。現状のお粗末さからは、私の直感ですが支持率にして10%はあるだろうと思う次第であります。ですから、その誤差以内での結果というのは全く議論の対象になりえないという事であって、無意味な世論調査ばかりだというのが、私見であります。
Posted by: ぶらいあん | October 25, 2005 at 04:26 PM
ぽさん、コメントありがとうございます。
私もいわゆる私立文系だったのですが、一応選択科目で数学が選べたので微積分までは何とかなりました。大学に入ってからその知識が随分役に立ったものです。∑を知らない学生は統計学でも(それ以外でも)ひたすら暗記するだけなので、いくら統計学の基礎の基礎でも、社会人になってしまうと忘れてしまうんでしょうね。二項分布の分散とか、分かっていれば覚えていなくても何とかなりますし(というか、理解して覚えたことは忘れないものです)。
前々から、経済や商学部は入試の必須科目に数学を入れるべきだという話はあったと思うのですが、未だにそれが多くの大学で一般的になったという話は聞きません。大学の経営問題とかあるのは分かりますけど、何とかしてもらいたいものです。
そもそも、日本にはマーケティングリサーチは必要なかったのだというのは面白いですね。確かにそうかもしれません。
Posted by: 馬車馬 | October 31, 2005 at 01:56 AM
kotarouさん、コメントありがとうございます。
自分の在り方を誇示するための調査、というのは面白いですね。個人的には、彼らがそこまでの戦略性を持ってやっているとは思えないのですが(だからこそ無知を強調したわけで)、TBを頂いた止揚さんのエントリーを読むとその考えもちょっと揺らぎます・・・流石に、無知だけでそこまでとんでもないことはできないよなぁ、と。
Posted by: 馬車馬 | October 31, 2005 at 02:39 AM
ぶらいあんさん、コメントありがとうございます。
おっしゃることには全面的に同意です。私は統計のユーザーサイドで、アンケート調査を作る側の訓練を受けたことがないので、系統誤差(こういう名前は知りませんでした)についてはイマイチ「相場観」がありません。それでエントリーでは余り触れなかったのですが、止揚さんのエントリーも拝見しますと、これはちょっと無視できるものではないなと。しかし、頼むからまともな学者の監修とか受けてもらえないものでしょうかね・・・。
Posted by: 馬車馬 | October 31, 2005 at 02:45 AM
はじめまして。
そんな事でケンカしちゃう人もいるんですね。
ある意味スゴイ事と思います。
統計については、ブログを拝見し「なるほど!」と思いました。
Posted by: ESTEE | January 23, 2006 at 04:50 PM
ESTEEさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
まぁ、新聞社というのも閉鎖的な職場というイメージがありますし、我々には想像しにくい風習とかもあるのかもしれません。決闘とか(笑)。
統計はもっと高校生ぐらいで教えてしまってもいいんじゃないかと思いますねー。
Posted by: 馬車馬 | January 29, 2006 at 01:13 AM